探しやすく並べ替えたら売上-6% ── 気づいた客は10%、下がったまま半年続いた

探しやすく並べ替えたら売上-6% ── 気づいた客は10%、下がったまま半年続いた
課題

「分かりやすい売場にすれば売れる」── ほとんどの資料がそう書いています。ところが実際に試した実験では、売上が下がりました。米国のスーパー 86 店舗で、缶詰スープの味をあいうえお順に相当する並びへ組み替えたところ -6%、シリアルをメーカー別からタイプ別へ組み替えたところ -5%でした。

しかも下がったまま 6 か月以上続いています。一時的な混乱では説明がつきません。

効果

この結果から持ち帰れるのは 「並べ替えは数%動かす力がある。ただし向きは試すまで分からない」という 1 点です。同じ実験では、粗利の高い商品を目の高さへ移して +8%、関連品を主力のあいだへ挟んで +5% という結果も出ています。

そしてもう 1 つ。客に聞いても判断できません。200 名への聞き取りでは、6 か月前の並べ替えに気づいていた客は 10%だけで、対照店の棚も「分かりにくい」と答えていました。

本記事は売場を変えるときの判断の仕方を扱います。「分かりにくくすれば売れる」という話ではありません。研究者自身が「十分な説明を持っていない」と論文に明記しているため、当サイトも断定しません。

よくある度 ★★★★☆
影響度 ★★★★☆
実施しやすさ ★★★★★
先生
先生

この記事は以下のような方に読んでいただきたい内容です。

  • 売場を「分かりやすく」整理しようとしている売り場責任者
  • 棚を変えたあと、効いたかどうか判断できていない店舗経営者
  • お客様に「見やすいですか」と聞いて判断しようとしている方
  • 並べ替えの効果を、感覚ではなく数字で確かめたい店長
  • 売場を変えるのが怖くて手をつけられずにいる方

概要 ── 探しやすくしたら -6%

店長
店長

売場をもっと分かりやすく整理しようと思っていたところです。同じ種類でまとめて、順番も揃えて…。それが逆効果になることがあるんですか。

先生
先生

あったんです。しかも研究者自身が「探しやすくすれば売れるはず」と考えて試した実験でした。結果は -6% と -5%。仮説が外れたという、めずらしい形で報告されています。

この記事で扱う数字
  • スープの味をあいうえお順に相当する並びへ: 売上 -6%
  • シリアルをメーカー別からタイプ別へ: 売上 -5%
  • 下落が続いた期間: 6 か月以上
  • 並べ替えに気づいていた客: 200 名中 10%

売り場カテゴリのこれまでの記事では、「陳列を目の高さに移すと売上+8% ── フェイス22%の付け替えでは動かない、棚は場所で決まる」 と 「関連品を主力の間に挟むと売上+5% ── 主力は減らず3品群すべて伸びた、挟む位置と幅」 という上がった結果を扱いました。本記事は同じ実験の、下がった結果です。

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この記事が主張しないこと

「分かりにくくすれば売れる」とは書きません。実験が示したのは 「論理的に正しい並びが、必ずしも売上を上げるとは限らない」という 1 点です。研究者自身がこの 2 つの結果について十分な説明を持っていないと論文に明記しているため、当サイトも理由を断定しません。

研究者も「探しやすくすれば売れる」と考えていた

この 2 つの実験は、売上を下げようとして行われたものではありません。論文には狙いがはっきり書かれています。

研究者が立てた仮説
  • 客が探しているブランドや味を 見つけられずに諦める回数がある
  • その回数を減らせば、
  • 決めていなかった購買を増やせるのではないか
  • だから より分かりやすい並びに組み替える
先生
先生

この仮説、いま売場の資料に書かれていることとまったく同じなんです。当サイトが調べた 6 サイトも、全部この前提で書かれていました。実際に試した人が、その前提を裏切られた。そこがこの実験の価値です。

製造元の側も同意していました。論文には 「われわれとメーカーが、より論理的だと考えた並び方」と書かれています。売場のプロが揃って正しいと判断した並びで、売上が下がったということです。

スープをあいうえお順に ── -6%

缶詰スープの棚で行ったこと
  • カテゴリの状況: 1 つのブランドが 95% を超えるシェアを占めていた
  • 元の並び: ほぼランダムな順
  • 変えたこと: 味をアルファベット順(あいうえお順に相当)に並べた。スパイス売場と同じ考え方
  • 結果: 売上 -6%
店長
店長

味を順番に並べるのは、うちでもやりたいと思っていた整理の仕方です。それで 6% 下がるとは…。

先生
先生

ただし条件は落とさないでください。このカテゴリは 1 ブランドが 95% 超でした。買うブランドが実質的に決まっている棚です。そういう棚では、並び順の意味が普通のカテゴリと違う可能性があります。

シリアルをタイプ別に ── -5%

シリアルの棚で行ったこと
  • 元の並び: メーカー別のブロック(ケロッグのブロック、ゼネラルミルズのブロック…)
  • 変えたこと: 3 つのタイプ(家族向け・子ども向け・大人向け)に分け、さらにサブタイプ(レーズンブラン、フルーツ味、高繊維)に整理
  • 売場の規模: 15 メートルの陳列。位置が大きく変わった
  • 結果: 売上 -5%

こちらは買う側の目線で整理した並びです。「誰が食べるか」「どんな味か」で探せるようにした。メーカーの都合ではなく客の都合で並べ替えた、と言えます。それでも下がりました。

一時的な混乱では説明できない ── 6 か月以上

まず疑うのは「並べ替えた直後で客が慣れていないだけ」という説明です。研究者もそれを検討しています。

なぜ「慣れの問題」ではないと考えられるか
  • 売上の下落が 6 か月以上続いた
  • 研究者の判断: 客が新しい並びを覚えるには十分な期間
  • 著者の記述: 組み替えが客を混乱させた可能性はあるが、それは可能性の高い説明ではない
先生
先生

ここは実務でも大事な点です。売場を変えて数字が落ちたとき、「そのうち慣れる」と言って様子を見がちですよね。この実験では半年たっても戻りませんでした。様子を見る期間は決めておいたほうがいいということです。

客は並びを知らない ── 気づいたのは 10%

研究者は原因を探るため、客に直接聞いています。ここで出てきた結果が、実務にとっていちばん使えます。

200 名への店頭聞き取りで分かったこと
  • 対象: 対照店 2 店・実験店 2 店の通路にいた常連客 200 名
  • 客は、各カテゴリがどう並んでいるかをほとんど知らなかった
  • 対照店の棚も、実験店の棚も、どちらも「分かりにくい」と答えた
  • 6 か月前の並べ替えに気づいていたのは 10% だけ
  • この論文が引く 1982 年の別の研究でも、店内通路の商品位置について客の知識が乏しいと紹介されている
店長
店長

変えた棚も、変えていない棚も、同じように「分かりにくい」と言われたんですね。…これ、お客様に聞いて決めるのは無理ということですか。

先生
先生

少なくとも「分かりやすいですか」と聞いて判断するのは難しいと思います。客の主観的な感想と、実際の売上の動きは別物でした。判断は販売数で行うしかありません。

ただし著者は但し書きも添えています。「言葉での報告は、客が空間的な感覚として持っている知識を過小評価している可能性がある」。説明はできなくても、体は場所を覚えているかもしれないということです。

客に聞いて分かることと分からないことの切り分けは、接客の場面でも同じです。聞き方の設計は 「常連客アンケート5問で離脱予兆検知+57% ── NPS不要の月次運用テンプレート」、言われないことを観察する方法は 「書かれないクチコミで観察可能化38%→79% ── 5シグナル×朝礼で改善ROI+28%」 にまとめています。

研究者は「説明できていない」と認めている

ではなぜ下がったのか。分かっていません。論文はそのことを率直に書いています。

研究者が挙げた 2 つの可能性と、その扱い
  • ① 組み替えが客を混乱させた → 可能性は低いと判断(下落が 6 か月以上続いたため)
  • ② 探すのを簡単にしすぎて、見て回ることと衝動買いが減った → 可能性として挙げているだけ
  • 著者の結論: 棚の組み方は業績に大きな影響を与えうるが、 この 2 つのテストについては十分な説明を持っていないことを率直に認める
先生
先生

ここを飛ばして「探しやすくすると衝動買いが減る」と言い切っている解説を見かけますが、論文はそこまで書いていません。可能性の 1 つとして挙げているだけです。当サイトも断定しません。

ひとつだけ、②の可能性に関係する数字はあります。棚のスペースと売上の関係を 1,268 件の推定値から統合したメタ分析(2014 年)によると、棚の割り当てが売上に効く度合いは、衝動買いされる商品でいちばん大きく、日用品でいちばん小さいという結果が出ています。衝動買いは、棚の見せ方に敏感な買われ方だということです。

ただしこれは 「探しやすくすると衝動買いが減る」を検証した研究ではありません。②の可能性を否定も肯定もしない、周辺の材料にすぎません。

分かっているのは 「並べ替えは売上を数%動かした」という事実だけです。向きは、試してみるまで分かりません。

それでも実務に持ち帰れる 3 つのこと

① 並べ替えには数%動かす力がある ── 上にも下にも
  • 下がった例: -6%(スープ)/-5%(シリアル)
  • 上がった例: +8%(目の高さへ移す)/+5%(関連品を主力のあいだへ)
  • 変えないという選択は、伸びしろを使わないことでもある
  • ただし 向きは事前に読めない。だから次の 2 つが要る
② 客に聞いて決めない
  • 並べ替えに気づいていた客は 10%。対照店の棚も「分かりにくい」と答えた
  • 「分かりやすいですか」という質問では判断できない
  • 判断は 販売数で行う。聞くなら「何を探していましたか」のような行動を聞く質問にする
③ 戻せる形で始め、様子を見る期間を先に決める
  • 変える前に 棚の写真を 1 枚撮る。これがないと戻せない
  • 1 カテゴリずつ試す。まとめて変えると、どれが効いたか分からない
  • 「そのうち慣れる」で引き延ばさない。実験では 6 か月たっても戻らなかった
  • 目安は 前後それぞれ 4 週間。減っていたら写真のとおりに戻す
先生
先生

この 3 つを守れば、下がる可能性は損失ではなく情報になります。4 週間で数%の話ですから、戻せる限り、試さない理由のほうが少ないと思います。

30 日の進め方 ── 撮る・変える・数える

1〜10 日目 ── 撮る
  • ① 1 カテゴリだけ選ぶ: 全売場を一度に変えない
  • ② 棚の写真を撮る: 戻すために必要。棚全体と、段ごとに 1 枚ずつ
  • ③ 前 4 週間の販売数を控える: カテゴリ合計と、動かす予定の主要な数品目
  • ④ 様子を見る期間を先に決める: 4 週間。この時点で紙に書いておく
11〜20 日目 ── 変える
  • ⑤ 並べ方の軸を 1 つだけ変える: メーカー別 → 用途別、など。同時に高さも変えない
  • ⑥ 変えた内容を 1 行で記録する: 「何を、何から何に変えたか」。後で説明できる形に
  • ⑦ 最初の 3 日は探している客がいないか見る: 立ち止まって見回している客を数える
  • ⑧ 客に感想を聞かない: 対照店の棚も「分かりにくい」と答えられている
21〜30 日目 ── 数える
  • ⑨ 後 4 週間の販売数を数える: 前と同じ数字。カテゴリ合計を必ず見る
  • ⑩ 決めた期間で判断する: 「もう少し様子を見る」で延長しない
  • ⑪ 減っていたら写真のとおりに戻す: 戻せることが試せる条件
  • ⑫ 結果を 1 行で残す: 上がっても下がっても記録する。下がった記録のほうが次に効く

⑫ が続けるための要です。下がった並べ方を記録しておけば、同じ失敗を別のカテゴリで繰り返さずに済みます。この実験も、下がった結果を正直に報告したからこそ 30 年後の売場に役立っています。

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参考研究・論点

  • ザビエル・ドレーズ、スティーブン・ホック、メアリー・パーク(1994 年発表) ── 米国の食品スーパー 86 店舗のチェーンでのフィールド実験。客が探している商品を見つけられずに諦める回数を減らせば、決めていなかった購買を増やせるという仮説のもと、缶詰スープの味をアルファベット順に、シリアルをメーカー別からタイプ別に組み替えた。結果はそれぞれ売上 -6%、-5%。下落は 6 か月以上続いた。対照店 2 店・実験店 2 店の常連客 200 名への聞き取りでは、客は各カテゴリの並びをほとんど知らず、対照店の棚も実験店の棚も「分かりにくい」と答え、6 か月前の並べ替えに気づいていたのは 10% だった。著者は、混乱が原因という説明は可能性が低いとし、探すのを簡単にしすぎて見て回ることと衝動買いが減った可能性を挙げつつ、この 2 つのテストについて十分な説明を持っていないことを率直に認めている
  • 同じ実験の他のカテゴリ ── 粗利の高い商品を上段から目の高さへ移すと売上 +8%、関連品を 2 つの主力のあいだへ挟むとカテゴリ売上・利益ともに +5%。棚割りを店ごとに組み替えた 8 カテゴリ全体では、6 カテゴリで有意に増加、2 カテゴリで有意でない減少(平均 +3.9%)
  • マルティン・アイゼント(2014 年発表) ── 棚スペース弾力性の推定値 1,268 件を統合したメタ分析。棚の割り当てが売上に効く度合いは、日用品で最も小さく、定番品がそれに次ぎ、衝動買いされる商品で最も大きい。本記事では「探すのを簡単にしすぎて衝動買いが減った」という可能性に関係する周辺の材料として参照している(この仮説を検証した研究ではない)
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並べ替えの前に、棚が空いていないかを見る

並べ替えで動くのは数パーセントですが、欠品はそれより大きく効きます。世界平均の欠品率は 8.3%、失う売上は年間の最大 4%。しかも原因の 25% は、在庫が店内にあるのに棚へ出ていないだけです。並べ方を考える前に、まず空きを数えてください。詳しくは 「欠品に当たった客の55%は買わずに帰る ── 31%が他店へ、原因の25%は品出しで直る」 をご参照ください。

まとめ

この記事のポイント
  • 探しやすく並べ替えたら売上が下がった ── スープ -6%、シリアル -5%
  • 研究者の狙いは 「探しやすくすれば売れるはず」だった。仮説が外れた
  • メーカーも同意した「より論理的な並び」だった。売場のプロが揃って正しいと判断した並びで下がった
  • 下がったまま 6 か月以上続いた。「そのうち慣れる」では説明がつかない
  • スープは 1 ブランドが 95% 超のカテゴリだった。この条件は落とせない
  • 並べ替えに気づいていた客は 200 名中 10%。対照店の棚も「分かりにくい」と答えた
  • だから 「分かりやすいですか」と聞いて判断できない。判断は販売数で行う
  • 研究者は「十分な説明を持っていない」と明記している。理由を断定してはいけない
  • 並べ替えには 数%動かす力がある ── 下に -6%、上に +8%。変えない選択は伸びしろを使わないこと
  • だから ①写真を撮る ②1 カテゴリずつ ③様子を見る期間を先に決める
  • 戻せる形で始めれば、下がる可能性は損失ではなく情報になる

今週できることは 1 つだけです。これから変えようとしている棚の写真を、変える前に 1 枚撮っておくこと。そして「4 週間で判断する」と紙に書いてから動かしてください。この 2 つがあるだけで、売場を変えることの怖さはかなり減ります。

※ 主データは 1994 年に米国の食品スーパー 86 店舗のチェーンで行われたフィールド実験です。国内の店舗を対象にしたものではなく、売場の環境も当時とは異なります。缶詰スープの実験は、1 つのブランドが 95% を超えるシェアを占めるカテゴリでの結果である点に注意してください。研究者は、売上が下がった理由について「組み替えが客を混乱させた」という説明を可能性が低いとしたうえで、「探すのを簡単にしすぎて見て回ることと衝動買いが減った」可能性を挙げていますが、同時に「この 2 つのテストについて十分な説明を持っていないことを率直に認める」と明記しています。本記事は理由を断定するものではなく、「分かりにくくすれば売れる」と主張するものでもありません。また客への聞き取りについて著者は、言葉での報告が空間的な感覚としての知識を過小評価している可能性にも触れています。本文で触れた 1982 年の別の研究は、主データの論文に引用されているものを紹介したもので、原典は確認できていません。自店では、カテゴリ合計と主要な品目の販売数を前後 4 週間で比べ、あらかじめ決めた期間で判断してください。

よくある質問

分かりやすく並べるのは、やめたほうがいいのですか?

そうは言えません。この実験が示したのは 「論理的に正しい並びが、必ずしも売上を上げるとは限らない」という 1 点です。米国のスーパー 86 店舗で行われた実験では、缶詰スープの味をあいうえお順に相当する並びへ、シリアルをメーカー別からタイプ別へ組み替えたところ、それぞれ売上が 6% と 5% 下がりました。

ただし研究者自身が「この 2 つの結果について十分な説明を持っていない」と論文に明記しています。分かりやすくすること自体を否定する根拠にはなりません。持ち帰るべきは、並べ替えは良い方向にも悪い方向にも数%動かす力があるので、必ず前後で数え、戻せる形で始めるということです。

なぜ探しやすくすると売上が下がったのですか?

分かっていません。研究者は 2 つの可能性を挙げています。1 つは棚の組み替えが客を混乱させたという説明ですが、著者はこれを可能性が低いと見ています。売上の下落が 6 か月以上続いており、客が新しい並びを覚えるには十分な期間だったからです。

もう 1 つは、探すのを簡単にしすぎたために、見て回ることと衝動買いが減ったという説明です。ただし著者はどちらとも断定せず、「十分な説明を持っていないことを率直に認める」と書いています。当サイトも断定しません。分かっているのは、並べ替えが売上を数% 動かしたという事実だけです。

客に「分かりやすいですか」と聞けば判断できますか?

判断できません。同じ実験で、対照店 2 店と実験店 2 店の通路にいた常連客 200 名に聞き取りを行ったところ、客は各カテゴリがどう並んでいるかをほとんど知りませんでした。しかも対照店の棚も実験店の棚も、どちらも「分かりにくい」と答えています。6 か月前に並べ替えられたことを認識していたのは、実験店の客の 10% だけでした。

この論文が引く 1982 年の別の研究でも、店内通路の商品位置について客の知識が乏しいと紹介されています。つまり客の主観的な感想と、実際の売上の動きは別物です。判断は販売数で行ってください。

どんなカテゴリでも同じことが起きますか?

分かりません。この実験でスープは 1 つのブランドが 95% を超えるシェアを占めるカテゴリでした。選ぶブランドが実質的に決まっている棚では、並び順の意味が普通のカテゴリと違う可能性があります。シリアルのほうは 15 メートルの売場で位置が大きく変わっており、変更の規模も小さくありません。

同じ実験の 8 カテゴリ全体では、6 つのカテゴリで売上・利益が有意に増加し、2 つで有意でない減少が見られています。つまり並べ替えは上がることも下がることもあります。自店のカテゴリでどうなるかは、実際に試して数えるまで分かりません。

では売場は変えないほうがいいのですか?

逆です。この実験が示しているのは、並べ替えには数% 動かす力があるということで、それは上向きにも働きます。同じ実験では、粗利の高い商品を目の高さへ移して売上が 8% 伸び、関連品を 2 つの主力のあいだへ挟んでカテゴリ売上・利益が 5% 伸びています。変えないという選択は、その伸びしろを使わないことでもあります。

大切なのは、変えたら必ず数えること、1 カテゴリずつ試すこと、そして元の並びを写真に撮っておいて減っていたら戻すことです。この 3 つを守れば、下がる可能性は損失ではなく情報になります。

📚 この記事の参考研究・一次資料
  • ザビエル・ドレーズ、スティーブン・ホック、メアリー・パーク(1994 年発表)「棚の管理と空間弾力性」 — 米国の食品スーパー 86 店舗のチェーンでのフィールド実験。客が探している商品を見つけられずに諦める回数を減らせば決めていなかった購買を増やせる、という仮説のもと、缶詰スープの味をアルファベット順に(当該カテゴリは 1 ブランドが 95% を超えるシェア)、シリアルをメーカー別のブロックから 3 つのタイプとサブタイプによる整理へ組み替えた(15 メートルの陳列で位置が大きく変化)。結果はそれぞれ売上 -6%、-5% で、下落は 6 か月以上続いた。対照店 2 店・実験店 2 店の常連客 200 名への店頭聞き取りでは、客は各カテゴリの並びをほとんど知らず、対照店の棚も実験店の棚も「分かりにくい」と答え、6 か月前の並べ替えに気づいていたのは 10% だった。著者は、混乱が原因という説明は下落の持続期間から可能性が低いとし、探すのを簡単にしすぎて見て回ることと衝動買いが減った可能性を挙げつつ、この 2 つのテストについて十分な説明を持っていないことを率直に認めている。なお同じ実験では、粗利の高い商品を目の高さへ移して +8%、関連品を 2 つの主力のあいだへ挟んでカテゴリ売上・利益ともに +5% という結果も得られており、8 カテゴリ全体では 6 カテゴリで有意に増加、2 カテゴリで有意でない減少(平均 +3.9%)だった。小売研究の国際学術誌
  • マルティン・アイゼント(2014 年発表)「棚スペース弾力性のメタ分析」 — 棚に割り当てたスペースと売上の関係について、1,268 件の推定値を統合したメタ分析。平均の弾力性は 0.17。効き方は商品の性格によって異なり、日用品で最も小さく、定番品がそれに次ぎ、衝動買いされる商品で最も大きい。本記事では、研究者が挙げた「探すのを簡単にしすぎて見て回ることと衝動買いが減った」という可能性に関係する周辺の材料として参照している。ただしこの仮説を直接検証した研究ではない。小売研究の国際学術誌

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