呼び出し待機をやめると心理的苦痛-14.8ポイント ── 時給より効く、小売2.8万人の調査
シフトは 人件費と作成の手間の問題として語られます。店舗向けの解説記事も、7 サイト中 7 サイトが「睡眠」「心理的」「幸福」に一度も触れていませんでした。
「働きやすいシフトが定着率に影響する」とは書かれていても、何をどれだけ変えれば、何がどれだけ動くのかは示されていません。
小売・外食で働く 27,792 名を調べた研究があります。呼び出し待機をやめることに対応する変化は、心理的苦痛が 14.8 ポイント低いというものでした。
時給を 1.50 ドル上げたときの変化は 0.8 ポイント。18 倍以上の開きがあります。費用はかかりません。
閉店から翌朝の開店までの間隔については 11 時間空けるシフト設計で詳しく扱いました。本記事は いつ知らせるか・約束を壊さないかの話です。
この記事は以下のような方に読んでいただきたい内容です。
- アルバイトの定着に悩んでいる店舗経営者
- シフトを直前まで確定できずにいる店長
- 「急で悪いけど」と頼むことが多い売り場責任者
- 時給を上げる以外の手を探している方
- 何日前に出せばよいのか決めかねている方
概要 ── 効くのは時給ではなくシフトの決め方
人が続かなくて。時給を上げるしかないのかと思っているのですが、うちの利益だと限界があります。
その前に手があります。小売・外食で働く 27,792 名を調べた研究だと、呼び出し待機をやめることに対応する変化のほうが、時給を上げるより 18 倍以上大きいんです。しかも費用はかかりません。
- 呼び出し待機をやめる: −14.8 ポイント
- 閉店から翌朝の開店をやめる: −11.1 ポイント
- 通知を 0〜2 日前から 2 週間より前へ: −8.1 ポイント
- 通知を 0〜2 日前から 1〜2 週間前へ: −7.9 ポイント
- 通知を 1〜2 週間前から 2 週間より前へ: −0.1 ポイント(ほぼ変わらない)
- 時給を 1.50 ドル上げる: −0.8 ポイント
この記事の数字について
主データは 社会学の国際学術誌に載った調査研究で、原文を取得して数値を照合しています。
ただし これは横断調査であって、因果を示すものではありません。 著者自身も 「効果量という語を正式な意味ではなく非公式に使っている」と注記しています。
数値は 統計モデルから計算した予測確率の差で、 人種・年齢・性別・学歴・時給・世帯所得・労働時間・勤続年数などを調整したうえでのものです。
小売・外食 27,792 名を調べた研究
- 回答者 27,792 名(すべて時給制で働く人)
- 全米 80 社の大手小売・外食チェーンの従業員
- 調査は 2017 年から 2018 年
- 平均時給は 11.60 ドル(中央値 10.60 ドル)
- 企業ごとの違いは統計的に取り除いている(同じ会社の中での比較になる)
この研究のうまいところは 対象の絞り方です。全員が同じ業界・同じ雇用形態・同じ規模の企業で働く人なので、職種や業界の違いが結果に混ざりにくくなっています。
- シフトの側: 事前通知の日数/週ごとの時間の振れ幅/シフトの取り消し/ 呼び出し待機/閉店から翌朝の開店/シフトへの口出しのしやすさ
- 心身の側: 心理的苦痛・睡眠の質・幸福感
- あわせて 世帯の家計の不安定さと 仕事と生活の衝突も測っている
ここで押さえていただきたいのは、シフトの「組み方」と「壊し方」を分けて測っていることです。あとで見るように、効き目が大きいのは壊すほうでした。
シフトの実態 ── 半数が閉店から翌朝の開店へ
- 事前通知が 0〜2 日: 16% / 3〜6 日: 18% / 1〜2 週間: 30% / 2 週間より前: 37%
- 1 週間未満しか知らされない人が 34%
- 直前のシフト取り消しを経験: 14%
- 呼び出し待機を経験: 26%
- 閉店から翌朝の開店を経験: 50%
- シフトに一切の口出しができない: 51%
- 週ごとの労働時間の振れ幅は平均 32%
半数が閉店から翌朝の開店ですか。うちも正直、人が足りない週はやってしまっています。
珍しいことではありません。だからこそ やめたときの効き目が大きいんです。50% の人が対象になる打ち手というのは、そうそうありません。
週ごとの振れ幅 32% というのは、平均で週 25 時間働く人が、ある週は 20 時間、別の週は 30 時間になるということです。収入も予定も、月ごとに読めません。
呼び出し待機をやめると 14.8 ポイント
この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。
- 心理的苦痛を感じる人が 14.8 ポイント少ない
- 幸福と答える人が 9.2 ポイント多い
- 睡眠が良いと答える人が 7.9 ポイント多い
- 対象になるのは 回答者の 26%
比べてみます。通知期間を目いっぱい伸ばしたときの心理的苦痛の下がり幅は 8.1 ポイントでした。呼び出し待機をやめるほうが、その 2 倍近く大きいことになります。
大事なのは、実際に呼ばれたかどうかではないということです。いつ呼ばれるか分からないまま一日を過ごすこと自体が負担になっています。呼ばれなかった日も、その人は休めていません。
- 「頼まない」と決めるだけなので、費用が一切かからない
- ただし、欠員が出たときの埋め方を先に決めておく必要がある
- 待機を頼む代わりに 「来られる人がいたら連絡してほしい」と任意で募る形に変える
- 断っても不利にならないことを、はっきり伝える
直前の取り消しが効く大きさ
- 心理的苦痛を感じている割合: 取り消しあり 65% / なし 45% 未満
- 幸福と答えた割合: 取り消しあり 56% / なし 73% ── 15 ポイントを超える差
- 呼び出し待機でも同じ向き: あり 65% / なし 75%
- 直前の取り消しを経験したのは 回答者の 14%
ここは 店側がいちばん軽く考えがちなところです。「今日は暇だから上がっていいよ」「明日は来なくて大丈夫」は、店から見れば人件費の調整ですが、働く側から見れば予定と収入がその場で消えることになります。
- 研究は 6 つの不安定さ(変動シフト・短い通知・取り消し・呼び出し待機・閉店から翌朝の開店・口出しできない)を数え上げた指標も作っている
- 5 つ以上に当てはまる人で、睡眠が良いと答えたのは 15%
- 1 つ以下の人では 35%
- → 1 つずつ増えるごとに、ほぼまっすぐ悪くなっていく
裏を返すと 1 つ減らせば、そのぶんは戻るということです。全部を一度に直す必要はありません。いちばん多く当てはまっているものから 1 つで構いません。
通知は 1〜2 週間前で頭打ち
- 0〜2 日前 → 3〜6 日前: −4.5 ポイント
- 0〜2 日前 → 1〜2 週間前: −7.9 ポイント
- 0〜2 日前 → 2 週間より前: −8.1 ポイント
- 3〜6 日前 → 2 週間より前: −3.6 ポイント
- 1〜2 週間前 → 2 週間より前: −0.1 ポイント
1〜2 週間より前に出しても、ほとんど変わらないんですね。
そこが実務的にありがたいところです。1 か月前に確定させる必要はありません。1〜2 週間前を必ず守るほうが、無理に早く出して直すより効きます。
睡眠と幸福では、2 週間より前に伸ばすとわずかに上乗せがあります(睡眠 +1.8 ポイント、幸福 +1.7 ポイント)。ただし 心理的苦痛では差がほぼゼロでした。まず 1〜2 週間前を確実にするのが優先になります。
- 0〜2 日前から 3〜6 日前に伸ばしても −4.5 ポイント にとどまる
- 1〜2 週間前まで伸ばすと −7.9 ポイント
- → 週の半ばに翌週分を出す、では効き目が半分ほど
- 「前の週の頭までに、翌週分を確定する」くらいが目安になる
時給を上げる効果の 18 倍以上
研究は 時給とシフトを同じモデルに入れて比べています。
- 呼び出し待機をやめる: −14.8 ポイント
- 閉店から翌朝の開店をやめる: −11.1 ポイント
- 通知を 0〜2 日前から 2 週間より前へ: −8.1 ポイント
- 時給を 7.25 ドルから 8.75 ドルへ: −0.8 ポイント
時給を 1.50 ドル、率にして 2 割ほど上げても 0.8 ポイントです。呼び出し待機をやめるほうが 18 倍以上大きい。しかも、こちらは費用がかかりません。
⚠️ 時給が関係ないという意味ではありません
時給が高いほど心理的苦痛が少なく、幸福で、睡眠が良いという関係自体は、 統計的に確かめられています。
ここで示されているのは 「同じだけの労力をかけるなら、どちらがより大きく動くか」という比較です。
また 対象は米国の時給制の小売・外食で、平均時給は 11.60 ドルでした。 国内の水準にそのまま置き換えられるものではありません。
なぜ効くのか ── お金ではなく私生活の予定
研究は 2 つの経路を分けて調べています。
- 世帯の家計が不安定になる経路: 心理的苦痛の 42% / 睡眠の 45% / 幸福の 37%
- 仕事と生活が衝突する経路: 心理的苦痛の 76% / 睡眠の 82% / 幸福の 76%
- → 著者は 「家計の不安定さは、主な理由ではない」と明記している
収入が読めないことより、生活の予定が立たないことのほうが大きいと。
そうです。保育の手配ができない、通院の予定が組めない、家族と過ごす時間が決められない。ここが 8 割近くを説明しています。だから 賃金以外の手が効くんです。
仕事から気持ちを切り離せるかどうかは、消耗の大きさに直結します。この点は 仕事を忘れられる人ほど消耗が低いで扱いました。いつ呼ばれるか分からない状態では、そもそも切り離しようがありません。
この研究の性質と限界
- 横断調査であって、因果ではない ── 著者も 「効果量という語を非公式に使っている」と注記
- 交流サイトの広告で回答者を募集している ── 事後の重みづけと複数の頑健性の確認を行ったが、残る偏りは排除できないと明記
- 企業ごとの違いは取り除いたが、同じ企業の中での割り当ての選別までは扱えない ── 店長の裁量やえこひいきで、特定の人にきついシフトが回る可能性
- 対象は米国の時給制の小売・外食(平均時給 11.60 ドル・2017〜2018 年)
- ただし全員が同じ業界・同じ雇用形態で、 人種・年齢・性別・学歴・時給・世帯所得・労働時間・勤続年数・管理職かどうか・子どもとの同居も調整済み
因果に近い証拠もある
本記事の主データは横断調査ですが、職場の働き方に手を入れる無作為化比較試験では、 介入を受けた側の睡眠が実際に改善したことが報告されています。
また、勤務間インターバルの記事で扱った研究も シフト表そのものを変えた無作為化試験で、眠気と不眠が実際に減りました。
シフトの決め方を変えると心身が動く、という向き自体は、別の設計の研究でも支持されています。
自店に持ち込めるのは 数値そのものではありません。 ①待機を頼まない ②いったん出したシフトを壊さない ③1〜2 週間前を守る。 この 3 つの進め方のほうです。
店舗で試す 5 つの手順
- 心理的苦痛の下がり幅は −14.8 ポイント。この研究で最大
- 費用は一切かからない
- 代わりに 「来られる人がいたら連絡してほしい」と任意で募る形にする
- 断っても不利にならないと、はっきり伝える
- 取り消しを経験した人の 65% が心理的苦痛。経験なしは 45% 未満
- 「今日は暇だから上がっていいよ」も、働く側には予定と収入の消失
- 暇な日は 本人に希望を聞いてから決める(店から言い渡さない)
- 0〜2 日前から 1〜2 週間前に伸ばすと −7.9 ポイント
- 3〜6 日前では −4.5 ポイントにとどまる
- 2 週間より前に伸ばしても、心理的苦痛では差がほぼない。無理をしなくてよい
- 調査では 50% が経験していた。やめると −11.1 ポイント
- まず今月のシフト表で、何件あるかを数える
- 具体的な直し方は 11 時間空けるシフト設計を参照
- 6 つの不安定さのうち 5 つ以上に当てはまる人は、睡眠が良いと答えたのが 15%
- 1 つ以下なら 35%
- 全部を一度に直さなくてよい。当てはまる数が多い人から 1 つ減らす
- 新人ほど不安定なシフトになりやすい。新人定着 3 要素とあわせて見る
まとめ
- 小売・外食で働く 27,792 名・全米 80 社を調べた研究。企業ごとの違いは統計的に取り除いている
- 呼び出し待機をやめると心理的苦痛が 14.8 ポイント低い (幸福 +9.2 / 睡眠 +7.9)。対象は 26%
- 閉店から翌朝の開店をやめると −11.1 ポイント。対象は 50%
- 通知を 0〜2 日前から 1〜2 週間前に伸ばすと −7.9 ポイント
- 1〜2 週間前から 2 週間より前に伸ばしても −0.1 ポイント ── 1〜2 週間前で頭打ち
- 時給を 1.50 ドル上げても −0.8 ポイント ── 呼び出し待機をやめる効果は、その 18 倍以上
- 取り消しを経験した人の 65% が心理的苦痛(経験なしは 45% 未満)。 幸福と答えたのは 56% 対 73%
- 効く理由は家計ではなく私生活の予定 ── 仕事と生活の衝突が 76〜82% を説明(家計は 37〜45%)
- 横断調査であり因果ではない。 著者自身が「効果量という語を非公式に使っている」と注記している
- 手順は ①待機を頼まない ②出したシフトを取り消さない ③前の週の頭までに確定する ④閉店から翌朝の開店を数える ⑤当てはまる数が多い人から減らす
今週できることは 1 つだけです。「念のため空けておいて」と頼むのを、今週からやめること。欠員が出たときは、来られる人を任意で募る形に変えてください。費用はかかりませんし、この研究で最も大きかった打ち手です。
※ 主データは社会学の国際学術誌に掲載された調査研究で、原文を取得して数値を照合しています。2017 年から 2018 年にかけて、全米 80 社の大手小売・外食チェーンで時給制で働く 27,792 名から集めた回答を分析したものです。本記事に出てくるポイント差は、統計モデルから計算した予測確率の差であり、人種・年齢・性別・学歴・婚姻状況・就学状況・時給・世帯所得・週の労働時間・勤続年数・管理職かどうか・子どもとの同居の有無、および年と月の固定効果、さらに企業の固定効果を調整したうえでの値です。ただしこれは横断調査であり、因果関係を示すものではありません。著者らは、効果量という語を正式な意味ではなく非公式に用いていること、回答者を交流サイトの広告で募集しているため事後の重みづけと複数の頑健性の確認を行ってもなお残る偏りは排除できないこと、企業ごとの違いは固定効果で取り除けるが同じ企業の中で誰に不安定なシフトが割り当てられるかという選別までは扱えないことを、限界として明記しています。対象は米国の時給制の小売・外食で、平均時給は 11.60 ドルでした。国内の店舗にそのまま当てはまる数値ではありません。自店では、まず今月のシフト表で呼び出し待機・直前の取り消し・閉店から翌朝の開店が何件あったかを数え、その数を減らした前後で定着と欠勤がどう動いたかを記録して確かめてください。
よくある質問
シフトは何日前に出せばよいですか
1〜2 週間前です。それより早めても、ほとんど変わりません。小売・外食で働く 27,792 名を調べた研究によると、通知を 0〜2 日前から 1〜2 週間前に伸ばすと、心理的苦痛を感じる人の割合が 7.9 ポイント下がり、幸福と答える人が 7.5 ポイント増え、睡眠が良いと答える人が 4.8 ポイント増えました。ところが 1〜2 週間前から 2 週間より前に伸ばしても、心理的苦痛の差は 0.1 ポイントしかありません。つまり効き目は 1〜2 週間前でほぼ頭打ちになります。2 週間より前に出すために無理をするより、1〜2 週間前を必ず守るほうが実務的です。なお 3〜6 日前では効果が半分ほどにとどまります。
呼び出し待機はそんなに悪いのですか
この研究で調べた中で最も大きな影響がありました。呼び出し待機をやめることに対応する変化は、心理的苦痛が 14.8 ポイント下がる、幸福と答える人が 9.2 ポイント増える、睡眠が良いと答える人が 7.9 ポイント増える、というものです。通知期間を最大限に伸ばしたときの心理的苦痛の下がり幅が 8.1 ポイントですから、その 2 倍近くになります。調査対象では 26% の人が呼び出し待機を経験していました。実際に呼ばれるかどうかにかかわらず、いつ呼ばれるか分からない状態そのものが負担になっていると読めます。店側から見れば、待機を頼まないと決めるだけで済むので、費用もかかりません。
時給を上げるより効くというのは本当ですか
この研究の範囲ではそうでした。研究は時給とシフトの両方を同じモデルに入れて比べています。時給を 7.25 ドルから 8.75 ドルへ、つまり 1.50 ドル上げたときに対応する心理的苦痛の変化は 0.8 ポイントでした。いっぽう呼び出し待機をやめる変化は 14.8 ポイントで、18 倍以上になります。ただし時給が関係ないという意味ではありません。時給が高いほど心理的苦痛が少なく、幸福で、睡眠が良いという関係自体は統計的に確かめられています。あくまで、同じだけの労力をかけるならシフトの決め方を変えるほうが大きく動く、という比較です。米国の時給制の小売・外食が対象である点にも注意が必要です。
なぜシフトの決め方で心身が変わるのですか
私生活の予定が立たなくなるからです。研究は 2 つの経路を分けて調べています。1 つは世帯の家計が不安定になる経路で、心理的苦痛への影響のうち 42% を説明しました。もう 1 つは仕事と生活が衝突する経路で、こちらは 76% を説明しています。睡眠では 82%、幸福では 76% です。著者は、家計の不安定さは主な理由ではないと明記しています。つまり収入が読めないことより、保育の手配ができない、通院の予定が組めない、家族と過ごす時間が決められない、といった生活側の支障のほうが大きいということになります。この点は、店側が賃金以外の手を打つ根拠になります。
この数字をそのまま自店に当てはめてよいですか
当てはめないでください。理由は 4 つあります。1 つ目は、これが横断調査であり因果ではないこと。著者自身も、効果量という語を正式な意味ではなく非公式に使っていると注記しています。2 つ目は、交流サイトの広告で回答者を募集していること。事後の重みづけと複数の頑健性の確認を行っていますが、残る偏りは排除できないと書かれています。3 つ目は、企業ごとの違いは統計的に取り除いているものの、同じ企業の中で誰にきついシフトが回るかという選別までは扱えていないこと。4 つ目は、対象が米国の時給制の小売・外食で、平均時給が 11.60 ドルだということです。
- ダニエル・シュナイダー、クリステン・ハークネット(2019 年発表)「日常的な勤務シフトの不安定さが労働者の健康と幸福に及ぼす帰結」アメリカ社会学評論 84(1) 82-114 — 本記事の主データ。2017 年から 2018 年に、全米 80 社の大手小売・外食チェーンで時給制で働く 27,792 名から集めた調査。事前通知の日数、週ごとの労働時間の振れ幅、直前のシフト取り消し、呼び出し待機、閉店から翌朝の開店、シフトへの関与のしやすさを測り、心理的苦痛・睡眠の質・幸福感との関係を推定している。予測確率の差では、呼び出し待機をやめると心理的苦痛が 14.8 ポイント、閉店から翌朝の開店をやめると 11.1 ポイント、事前通知を 0〜2 日から 2 週間より前に伸ばすと 8.1 ポイント下がる一方、時給を 7.25 ドルから 8.75 ドルに上げた場合は 0.8 ポイントにとどまった。1〜2 週間前から 2 週間より前への延長では心理的苦痛の差は 0.1 ポイントだった。媒介分析では、世帯の経済的不安定さが心理的苦痛への影響の 42%、睡眠の 45%、幸福の 37% を説明したのに対し、仕事と生活の衝突はそれぞれ 76%、82%、76% を説明しており、著者らは経済的不安定さが主因ではないと述べている。限界として、横断調査であり因果ではないこと、交流サイトの広告による募集に伴う偏りが残りうること、企業内での割り当ての選別は扱えないことが明記されている。ハーバード大学およびカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究。社会学の国際学術誌
- ライアン・オルソン、トリ・クレイン、トッド・ボドナー、ロザリンド・キング、レスリー・ハマー、ローラ・クラインほか(2015 年発表)「職場への介入が睡眠を改善する ── 無作為化比較試験による仕事・家族・健康研究の結果」スリープ・ヘルス 1(1) 55-65 — 主データが引用している無作為化比較試験。職場での働き方に手を入れる介入を行い、介入を受けた側で睡眠が改善したことを報告している。本記事では、主データが横断調査であるという限界を補う位置づけで、シフトや働き方に手を入れると心身が動くという向き自体は別の設計の研究でも支持されている、という文脈で参照している。睡眠研究の国際学術誌
- ヨンミン・チョ(2017 年発表)「非標準的な勤務シフトが労働者の健康に及ぼす影響 ── 仕事から家庭への衝突が果たす媒介の役割」国際社会福祉学会誌 27(1) 74-87 — 主データが媒介の仮説を立てる根拠として引用している研究。決まった日中以外の時間帯に働くことと精神的健康の悪化との関係を、仕事から家庭への衝突が媒介していることを示している。本記事では、シフトが心身に効く経路が家計ではなく生活側にあるという結論の裏づけとして参照している。なお、この研究は事前通知の日数、労働時間の振れ幅、呼び出し待機、シフトの取り消しといった要素は扱っていない。社会福祉の国際学術誌
接客のお悩み、論文と現場の知恵で解決しませんか?
テンプレートと事例を組み合わせれば、
明日からの現場が変わります。