品揃えを削ると購入間隔が25%延びる ── 減るのは客単価ではなく来店回数
「売れない品目を削れば、利益も売上も良くなる」── よく聞く話です。ところが削って店全体の売上が減った実験があります。840 世帯には削った売り場を、378 世帯には元のままの売り場を出して 1 年間追った研究です。
しかも減り方が問題でした。注文と注文のあいだの間隔が平均 25.0% 延びたのです。1 回あたりの買物額ではなく、買いに来る回数のほうが削られていました。
見分け方があります。同じ研究で、カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごとに、削減によるカテゴリ売上の変化が平均 2.23% 悪化していました。
つまり 「たまにしか買わないカテゴリ」ほど削ってはいけない。回転が低いものから削るという一般的な考え方とは、逆になります。
前回は 「在庫記録の65%は合っていない ── 店内にあるのに客が見つけられない分だけ売上が減る」 として、品揃えを増やすと客が見つけられない商品も増えることを扱いました。本記事はその裏返しで、減らす側で何が起きるかを見ていきます。
この記事は以下のような方に読んでいただきたい内容です。
- 品揃えを絞ろうか迷っている店舗経営者
- 売れない品目のリストを作ったところで手が止まっている店長
- 削った後に売上が下がって原因が分からない売り場責任者
- 棚が狭く、何かを削らないと新商品を入れられない方
- 「回転の低い順に削る」で本当によいのか確かめたい方
概要 ── 削ると減るのは客単価ではない
棚が足りないので、売れていない品目を落とそうと思っています。回転の低い順にリストを作ったのですが、これでいいでしょうか。
その順番が、いちばん危ないかもしれません。今日は 2 つお話しします。削ったときに減るのは客単価ではなく来店回数だということ。そして 回転が低いカテゴリこそ削ってはいけないという結果です。
- 品揃えを削った後、注文と注文のあいだの間隔: 平均 25.0% 延びた
- 買うか買わないかに影響が出たカテゴリ: 74% ほど/買う量に影響が出たカテゴリ: 36%
- カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごとの売上の悪化: 平均 2.23%(標準誤差 0.71%)
- 広く知られた「削ると売上 +11%」: いまは +1.5%(標準誤差 1.4%)として扱われている
この記事の数字について
中心となるのは 米国のネットスーパー(宅配)1 社・単一都市・1997 年から 1998 年の研究です。 実店舗の来店とは条件が違いますし、業態も国も異なるため自店の値を示すものではありません。 また 既存客の使い方の変化を見たものであり、新規客の獲得への影響は含みません。 受け取るべきは「削ると、かごの中身より先に来店そのものが減ることがある」という向きのほうです。
なぜ「削ると売れる」と信じられているか
出発点になっているのは、2000 年に発表されたジャムの試食台の実験です。高級スーパーの店内に試食台を出し、並べる種類を変えて客の反応を見ました。
- 24 種を並べたとき: 立ち寄った客 60% / 立ち寄った人のうち購入 3%
- 6 種に減らしたとき: 立ち寄った客 40% / 立ち寄った人のうち購入 30%
- 正味の購入率は 1.8% 対 12%
- つまり 多いほうが人は寄ってくるが、買わない
この結果が強烈だったので、「寄せる指標」と「売る指標」は別物だという見方が広まりました。ここは今でも有効な視点です。立ち寄り数と購入率を分けて見るのは、そのまま売り場の測り方に使えます。
ただし、この実験にはそのまま一般化できない事情が 2 つあります。1 つは次の章で扱います。もう 1 つは、これが試食台の実験であって、店全体の品揃えを削った実験ではないことです。
ただし平均するとゼロだった
2010 年に、この「選択肢が多すぎると選べなくなる」という現象を多数の研究で統合したメタ分析が発表されました。
- 全体の平均効果はほぼゼロ
- 条件次第で正にも負にもなる
- つまり 「選択肢は少ないほうが売れる」は一般法則ではない
あの有名な実験は、否定されてしまったということですか。
否定ではありません。「起きるときは起きるが、いつでも起きるわけではない」ということです。危ないのは、この 1 件を根拠に自店の棚を削ってしまうこと。試食台で起きたことと、店全体で起きることは別だと分けて考えてください。
「+11%」はいま +1.5% として扱われている
品揃え削減の話でもう 1 つ有名なのが、2001 年に発表された「削ったら売上が増えた」という研究です。
- 94% のカテゴリで商品数を大幅に削減(特に売れ行きの低いもの)
- 42 カテゴリ平均で売上 +11%
- 3 分の 2 を超えるカテゴリで売上が上昇、その半数近くが +10% 以上
- 75% の世帯が削減後に支出を増やした
この +11% がひとり歩きして、「品揃えを削れば売上は伸びる」という話になりました。ところがその後の経緯まで追うと、話が変わります。
- 著者ら自身が 2004 年に訂正を出している(学術誌の訂正欄)
- 2005 年に発表された別の研究が、2001 年の論文と 2004 年の訂正を併記して引用したうえで、 「売上に変化なし。推定は +1.5%、標準誤差 1.4%」と記述している
- 標準誤差 1.4% に対して推定 +1.5% = 統計的にゼロと区別できない
- この 2005 年の研究の著者には、2001 年の研究の著者 2 名がどちらも含まれている
ここは慎重に受け取ってください。訂正そのものの全文は取得できていません。何がどう訂正されたかまでは確認できていない。確実に言えるのは、いま学術文献のなかで生きている推定値は +11% ではなく +1.5% だということだけです。
実務としての結論は 1 つです。「削れば売上が伸びる」という前提で計画を立てない。削減の目的はコストや作業量の削減に置き、売上は「下がらなければ上出来」と見ておくほうが安全です。
840 世帯 対 378 世帯の自然実験
ここからが本題の 2005 年の研究です。対照群のある自然実験である点が、この研究の強みです。
- 対象: 米国のネットスーパー(宅配)1 社、単一都市
- 実験群: 840 世帯(品揃えを削った売り場)
- 対照群: 378 世帯(品揃えは元のまま)
- 削減幅: カテゴリ内の商品の 24% 〜 91%。全カテゴリで一斉に実施
- 期間: 1997 年 1 月から 1998 年 1 月。後半 6 か月が削減後
- 購買機会: 実験群 7,743 回/対照群 3,275 回
- カテゴリ: 147 カテゴリを観測。1 回の買物で平均 20 カテゴリを購入
24% から 91% というのは、ずいぶん思い切って削っていますね。
そこは正しい読み方です。これは深く、しかも全カテゴリで一斉に削った場合の結果。数品目を落とす話とは別だと押さえてください。ただし「全カテゴリを一斉に」というのは、棚替えのときに実際によく起きることでもあります。
結果は、店全体の売上が減少でした。著者らはこれを「近年の品揃え削減の研究のすべてと対照的な結果」と書いています。
減ったのは来店回数だった
売上が減ったこと以上に重要なのが、どこが減ったかです。
- 購入頻度と購入金額の両方が減ったが、損失が大きかったのは購入頻度のほう
- 注文と注文のあいだの間隔が平均 25.0% 延びた
- カテゴリ単位では、買うか買わないかに影響が出たのが74% ほどのカテゴリ
- いっぽう 買う量に影響が出たのは 36% のカテゴリだけ
- 著者らの言葉: 「よそで買うようになったのではなく、買いに来る回数が減った」
ここが実務ではいちばん怖いところです。客単価は変わらないので、レジのデータを見ても異変に気づけない。減っているのは「今日来ていない人」なので、店の中には現れません。削減の効果は、客単価ではなく来店間隔で測ってください。
削った結果として棚が空いたなら、その空きをどう使うかが次の論点になります。棚の位置と売上の関係は 「陳列を目の高さに移すと売上+8% ── フェイス22%の付け替えでは動かない、棚は場所で決まる」 にまとめています。
打撃が大きいのは「たまにしか買わない」カテゴリ
同じ研究は、どのカテゴリで打撃が大きかったかも示しています。ここが実務の判断軸を変えます。
- 買う頻度が低いカテゴリほど、打撃が大きかった
- 具体的には カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごとに、削減による売上の変化が平均 2.23% 悪化(標準誤差 0.71%)
- すべてのカテゴリで減ったわけではない。購入頻度が上がったカテゴリもあった
- 著者らの見方: たまにしか買わないカテゴリでは、客は「これでなければ困る」という具体的な目的を持って来ているのではないか
回転が低いものから削る、と教わってきたのですが…。
そこは 「品目の回転」と「カテゴリの購買間隔」を混同しないことです。売れ行きの低い品目を削るのは構いません。危ないのは、客がたまにしか買わないカテゴリを、まるごと薄くしてしまうこと。削る対象は品目で選び、削る深さはカテゴリで加減すると考えてください。
2.23% の読み方
これは 「カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごと」の値であり、売上が 2.23% 減るという意味ではありません。 たとえば 3 日おきに買われるカテゴリと 13 日おきに買われるカテゴリを比べると、 差は 10 日ぶんですから、後者のほうが削減の結果が平均で 22% ほど悪い側に出るという読み方になります。 標準誤差は 0.71% です。この数字を自店の予測に使わないでください。順序を決めるための目安として使います。
削ってよい品目の条件
ここまでは「気をつけろ」という話でした。では、どう削れば安全なのか。研究が示している条件をまとめます。
- お気に入りの商品が残っていること(1998 年の研究)
- 売場の面積が維持されていること(同)
- この 2 つが満たされていれば、売れ行きの低い品目を削っても品揃えの感じ方は変わらないとされている
- 2001 年の研究でも、重複した品目の削減は一様に歓迎された。 いっぽう サイズ違いの削減には反応が割れた
2005 年の研究も、同じ方向を裏づけています。
- お気に入り以外を削った場合: 買物かご内のシェアが増えたカテゴリが 23
- お気に入りを削った場合: 増えたのは わずか 4 カテゴリ
- つまり 削ってよいのは「その客が買っていない品目」
ここは 「誰のお気に入りか」を店の全体で見ないのがコツです。全体で見れば低回転でも、特定の客にとっては毎回買う品目ということがあります。その品目を買っている客が何人いて、その人たちが他に何を買っているかを先に見る。それが次章の手順です。
削る前に確かめる 5 つの手順
- 各カテゴリが 何日おきに買われているかを出す
- 売上や回転ではなく 「間隔」で並べる
- 間隔が長いカテゴリは、削る深さを浅くする
- 削る候補の品目について、直近 3 か月で買った客の人数を数える
- 売上金額ではなく人数で見る。少人数が繰り返し買っている品目を見落とさないため
- 人数が一定以上なら、それは誰かのお気に入り
- 候補品目だけを買いに来ている客がいないかを確かめる
- その品目が来店の理由になっているなら、削ると来店ごと失う
- ほかにも買っているなら、削っても来店は続く可能性が高い
- 研究で一様に歓迎されたのは重複した品目の削減
- サイズ違いの削減は反応が割れるので後回しにする
- ブランドをまるごと消す・サイズをまるごと消すのは最後の手段にする
- 品目を削っても 売場の面積は維持する
- 研究が挙げている「影響が出にくい条件」の 1 つ
- 空いた分は残した品目のフェイスに回すか、間隔を広げる
削りすぎて欠品が増えると、別の損失が乗ります。欠品の代償は 「欠品に当たった客の55%は買わずに帰る ── 31%が他店へ、原因の25%は品出しで直る」 にまとめています。
30 日の進め方 ── 測る・選ぶ・削る
- ① カテゴリごとの購買間隔を出す: 何日おきに買われているか
- ② 間隔の長い順に並べる: この順が削ってはいけない順
- ③ 来店間隔の現状値を控える: 後で効果を測る基準になる
- ④ 削る目的を文章で決める: 「売上を伸ばす」ではなく 「作業量を減らす」「新商品の場所を作る」と書く
- ⑤ 候補品目を買っている客の人数を数える: 金額ではなく人数
- ⑥ その客が他に何を買っているかを見る: 来店の理由になっている品目を外す
- ⑦ 重複から選ぶ: サイズ違いは後回し
- ⑧ 間隔の長いカテゴリは削る数を半分にする: 一律の削減率をかけない
- ⑨ 1 カテゴリから始める: 全カテゴリ一斉はやらない
- ⑩ 売場面積は維持する: 空いた分は残した品目に回す
- ⑪ 客単価ではなく来店間隔を見る: 客単価は変わらなくても来店が減っていることがある
- ⑫ 2 か月見てから次のカテゴリへ: 間隔の変化は遅れて出る
⑪ が続けるための要です。客単価だけを見ていると、来店が減っていることに気づけません。研究で減ったのは、まさにそこでした。同じ客が前より何日長く来なくなったかを見てください。
参考研究・論点
- シャラド・ボーレ、ピーター・ボートライト、ジョセフ・ケイデン、ジョセフ・ヌネス、ガリット・シュムエリ(2005 年発表) ── 米国のネットスーパーで、840 世帯に削減後の品揃えを、378 世帯に元の品揃えを提示した自然実験。削減幅はカテゴリ内の 24% から 91%。店全体の売上が減少し、注文と注文のあいだの間隔が平均 25.0% 延びた。買うか買わないかに影響が出たのが74% ほどのカテゴリなのに対し、買う量に影響が出たのは 36% のカテゴリだけ。カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごとに、売上の変化が平均 2.23%(標準誤差 0.71%)悪化した
- ピーター・ボートライト、ジョセフ・ヌネス(2001 年発表/2004 年訂正) ── 同じネットスーパーのデータの一部を使い、42 カテゴリ平均で売上 +11% と報告した。ただし 2005 年の研究は、2001 年の論文と 2004 年の訂正を併記したうえで「売上に変化なし。推定 +1.5%、標準誤差 1.4%」と記述している。訂正の全文は取得できていないため、何がどう訂正されたかまでは確認できていない
- シーナ・アイエンガー、マーク・レッパー(2000 年発表) ── 高級スーパーの試食台にジャムを 24 種並べたときは立ち寄り 60% で購入 3%、6 種のときは立ち寄り 40% で購入 30%。試食台の実験であり、店全体の品揃えを削った実験ではない
- ベンヤミン・シャイベヘネ、ライナー・グライフェンダー、ピーター・トッド(2010 年発表) ── 選択肢が多すぎると選べなくなる現象のメタ分析。全体の平均効果はほぼゼロで、条件次第で正にも負にもなる
- スーザン・ブロニアーチク、ウェイン・ホイヤー、リー・マカリスター(1998 年発表) ── お気に入りの商品が残り、売場面積が維持されていれば、売れ行きの低い品目を削っても品揃えの感じ方は変わらない
まとめ
- 品揃えをカテゴリ内の 24% から 91% 削った実験で、店全体の売上が減った
- 減ったのは 客単価ではなく来店回数。 注文と注文のあいだの間隔が平均 25.0% 延びた
- 買うか買わないかに影響が出たのが 74% ほどのカテゴリ、買う量は 36% だけ
- 著者らの言葉は 「よそで買うようになったのではなく、買いに来る回数が減った」
- 客単価を見ていても異変に気づけない。効果は来店間隔で測る
- 打撃が大きいのは たまにしか買わないカテゴリ。 購買間隔が 1 日長くなるごとに平均 2.23% 悪化
- つまり 削る対象は品目で選び、削る深さはカテゴリで加減する
- 広く知られた 「削ると売上 +11%」 は、いま +1.5%(標準誤差 1.4%)として扱われている
- 削っても影響が出にくいのは お気に入りが残り、売場面積が維持されているとき
- 重複した品目の削減は一様に歓迎されたが、サイズ違いの削減は反応が割れた
- 手順は ①購買間隔を出す ②買っている客の人数を数える ③その客が他に何を買っているか見る ④重複から削る ⑤売場面積は減らさない
削った先で客に店内をどう通ってもらうかは 「遠くを通らせると計画外の買物が+54% ── 客は売場の半分も歩いていない」 にまとめています。品数を減らしても、通ってもらえなければ棚は無いのと同じです。
今週できることは 1 つだけです。削る候補のリストを、売上の低い順ではなく「カテゴリが何日おきに買われているか」の順に並べ替えてみること。並べ替えるだけで、手をつけてはいけないカテゴリが上に浮かんできます。
※ 中心となる研究は、米国のネットスーパー(宅配)1 社・単一都市・1997 年から 1998 年のものです。実店舗の来店とは条件が異なり、業態も国も違うため、自店の値を示すものではありません。削減幅はカテゴリ内の 24% から 91% と深く、しかも全カテゴリで一斉に実施されたもので、数品目を落とす場合とは条件が違います。また既存客の使い方の変化を見た研究であり、新規客の獲得への影響は含みません。「購買間隔が 1 日長くなるごとに 2.23%」は売上が 2.23% 減るという意味ではなく、カテゴリ間の比較に使う値です(標準誤差 0.71%)。「+11%」と「+1.5%」については、2004 年の訂正の全文を取得できていないため、何がどう訂正されたかまでは確認できていません。確認できているのは、2005 年の研究が 2001 年の論文と 2004 年の訂正を併記したうえで「推定 +1.5%、標準誤差 1.4%」と記述していることだけです。自店では、カテゴリごとの購買間隔と、同じ客の来店間隔を記録しながら確かめてください。
よくある質問
品揃えを削ると利益が改善すると聞きます。売上まで落ちるのですか?
落ちた実験があります。米国のネットスーパーで、840 世帯には品揃えを削った売り場を、378 世帯には元のままの売り場を提示して 1 年間追った研究では、店全体の売上が減りました。削減幅はカテゴリ内の商品の 24% から 91% で、全カテゴリで一斉に実施されています。
ただしすべてのカテゴリで減ったわけではなく、購入頻度が上がったカテゴリもありました。この研究は既存客の使い方の変化を見たもので、新規客の獲得への影響は含みません。また米国・単一都市・1997 年から 1998 年のネットスーパーであり、実店舗にそのまま当てはまる保証はありません。
売上が減ったというのは、1 回あたりの買物額が減ったということですか?
違います。そこがこの研究のいちばん重要な点です。購入頻度と購入金額の両方が減りましたが、損失が大きかったのは購入頻度のほうでした。注文と注文のあいだの間隔は平均で 25.0% 延びています。
著者らは「よそで買うようになったのではなく、買いに来る回数が減った」と書いています。カテゴリ単位で見ても、買うか買わないかに影響が出たのが74% ほどのカテゴリなのに対し、買う量に影響が出たのは 36% のカテゴリだけでした。つまり削減は、かごの中身ではなく来店そのものを削ります。
「品揃えを削ると売上が 11% 増えた」という研究があるはずですが?
2001 年に発表された研究の要旨には、42 カテゴリ平均で売上が 11% 増えたとあります。ただしこの研究には、著者ら自身が 2004 年に訂正を出しています。そして 2005 年に発表された別の研究は、2001 年の論文と 2004 年の訂正を併記して引用したうえで 「売上に変化なし。推定は 1.5% 増、標準誤差 1.4%」と記述しています。
標準誤差 1.4% に対して推定 1.5% ですから、統計的にゼロと区別できない値です。この 2005 年の研究の著者には、2001 年の研究の著者 2 名がどちらも含まれています。なお訂正そのものの全文は取得できていないため、何がどう訂正されたかまでは確認できていません。
削ってよい品目と、削ってはいけない品目の見分け方はありますか?
2 つの軸があります。1 つ目は客がそのカテゴリを何日おきに買うかです。2005 年の研究では、カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごとに、削減によるカテゴリ売上の変化が平均で 2.23% 悪化していました。たまにしか買わないカテゴリほど削ってはいけない、ということです。回転が低いものから削るという一般的な考え方とは逆になります。
2 つ目は何を削るかです。同じ研究では、お気に入り以外の品目を削った場合に買物かご内のシェアが増えたカテゴリが 23 あったのに対し、お気に入りを削った場合はわずか 4 カテゴリでした。1998 年の研究でも、お気に入りが残り売場面積が維持されていれば品揃えの感じ方は変わらないと報告されています。
選択肢が多すぎると客は選べなくなる、という話はどうなりますか?
有名な実験はあります。高級スーパーの試食台にジャムを 24 種並べたときは 60% の客が立ち寄り、そのうち 3% が購入しました。6 種にすると立ち寄りは 40% に減りましたが、購入は 30% に上がりました。
ただし 2 つ注意が必要です。1 つは、これが試食台の実験であって、店全体の品揃えを削った実験ではないこと。もう 1 つは、この現象を多数の研究で統合したメタ分析では、全体の平均効果がほぼゼロだったことです。条件次第で正にも負にもなります。「選択肢は少ないほうが売れる」を一般法則として自店に持ち込まないでください。
- シャラド・ボーレ、ピーター・ボートライト、ジョセフ・ケイデン、ジョセフ・ヌネス、ガリット・シュムエリ(2005 年発表)「品揃えの変更が客の定着に与える影響」 — 米国のネットスーパー 1 社・単一都市で、840 世帯に削減後の品揃えを、378 世帯に元の品揃えを提示した自然実験。削減幅はカテゴリ内の 24% から 91%。店全体の売上が減少し、注文と注文のあいだの間隔が平均 25.0% 延びた。買うか買わないかに影響が出たのが74% ほどのカテゴリなのに対し、買う量に影響が出たのは 36% のカテゴリだけで、著者らは「よそで買うようになったのではなく、買いに来る回数が減った」と記している。カテゴリの購買間隔が 1 日長くなるごとに、売上の変化が平均 2.23%(標準誤差 0.71%)悪化した。マーケティング科学の国際学術誌
- ピーター・ボートライト、ジョセフ・ヌネス(2001 年発表)「品揃えを削る ── 属性にもとづく方法」 — 上と同じネットスーパーのデータの一部を用い、94% のカテゴリで商品数を大幅に削減した結果、42 カテゴリ平均で売上 +11%、3 分の 2 を超えるカテゴリで売上上昇、75% の世帯が支出を増やしたと報告した。重複した品目の削減は一様に歓迎されたが、サイズ違いの削減には反応が割れた。著者らは 2004 年に訂正を出しており、2005 年の研究は 2001 年と 2004 年を併記したうえで「売上に変化なし。推定 +1.5%、標準誤差 1.4%」と記述している。マーケティングの国際学術誌
- シーナ・アイエンガー、マーク・レッパー(2000 年発表)「選択肢がやる気を削ぐとき」 — 高級スーパーの試食台にジャムを 24 種並べたときは立ち寄り 60% で購入 3%、6 種のときは立ち寄り 40% で購入 30%。正味の購入率は 1.8% 対 12%。試食台での実験であり、店全体の品揃えを削った実験ではない。人格・社会心理学の国際学術誌
- ベンヤミン・シャイベヘネ、ライナー・グライフェンダー、ピーター・トッド(2010 年発表)「選択肢は多すぎることがあるのか ── メタ分析による検討」 — 選択肢が多すぎると選べなくなるという現象を多数の研究で統合したメタ分析。全体の平均効果はほぼゼロで、条件次第で正にも負にもなる。本記事では、試食台の実験をそのまま一般化してはいけないことの裏づけとして参照している。消費者研究の国際学術誌
- スーザン・ブロニアーチク、ウェイン・ホイヤー、リー・マカリスター(1998 年発表)「食品カテゴリの品揃えに対する客の受け取り方 ── 品目削減の影響」 — お気に入りの商品が残り、売場面積が維持されていれば、売れ行きの低い品目を削っても品揃えの感じ方は変わらないと報告した。本記事では「削っても影響が出にくい条件」として参照している。マーケティング研究の国際学術誌
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