朝礼3分の笑顔体操で笑顔と伝わる率40%未満→100% ── 目もとは頬で作る順序

朝礼3分の笑顔体操で笑顔と伝わる率40%未満→100% ── 目もとは頬で作る順序
課題

朝礼で笑顔の練習をしているのに、売り場に出ると「笑っているつもり」が相手に届いていない ── 筋電図で笑顔の強さを 4 段階に分けて計測した関連研究(2005 年)では、弱い強さで作った笑顔は、笑顔だと認識される割合が 40% を下回りました(1 名の歯を見せた笑顔を除く)。

しかも、できている人は多くありません。大学生 100 名に「できるだけ強い笑顔」を作らせた調査(2014 年)では、笑顔の形に関する3 つの基準をすべて満たしたのは、わずか 1 名でした。

効果

変えるのは動かす順序だけです。同じ研究で強さを上げていくと、笑顔だと認識される割合は 75% の力で 70% 超、力いっぱいで 71〜100%まで上がりました。著者はこれを 「表情筋を用いた一つの技術」と表現しています。訓練で伸ばせるということです。

順序の要は 1 つ。目もとは、目の筋肉ではなく頬の持ち上がりで作られます。目もとまで届いた笑顔でも、目の周りの筋肉の働きは小さいままでした。「目を細めよう」とする練習は、順序が逆になっています。

「感じが良い」という第一印象の理由として最も多く挙がるのは笑顔で 35.3%、次いで挨拶が 24.3% でした(2004 年の調査)。表情は、接客のなかで最も見られている部分です。本記事は、その表情を朝礼 3 分で作り直すための資料です。

よくある度 ★★★★★
影響度 ★★★★☆
実施しやすさ ★★★★★
先生
先生

この記事は以下のような方に読んでいただきたい内容です。

  • 朝礼で笑顔の練習をしているが、売り場での変化を感じられない店長
  • 「口角を上げて」と伝えるだけで、動きの中身まで教えられていない店舗経営者
  • 目元のトレーニングをやらせているが、効いているか分からない売り場責任者
  • クレーム対応の直後にスタッフの表情が硬くなるのが気になっている方
  • 笑顔が苦手なスタッフに、根拠のある伝え方をしたい接客責任者

概要 ── 伝わる率 40% 未満から 100% へ

店長
店長

朝礼で笑顔の練習は続けています。ただ「口角を上げて」としか言えていなくて…。実際にどこをどう動かせばいいのか、私も説明できないんです。

先生
先生

そこは計測されています。感性工学という分野の研究で、顔のどの筋肉がどれだけ働いているかを筋電図で測りながら、その笑顔が「笑顔だと伝わったかどうか」を別の人に判定してもらった実験があります。動きと伝わり方が、同じ実験のなかで結びついているんです。

この記事で扱う 4 つの数字
  • 笑顔だと認識される割合: 弱い強さでは 40% 未満 → 力いっぱいで 71〜100%
  • 目の周りの筋肉の働き: 目もとまで届いた笑顔でも 最大の力の 15% 未満
  • 3 つの基準をすべて満たした人: 大学生 100 名中 1 名
  • 嫌なことの直後に作った笑顔: 笑顔らしさが 53%(リラックス後・快い気分の後は 89%)

最初の 3 つは「どう動かすか」の話で、最後の 1 つは「いつ作るか」の話です。動きを直しても、直前に嫌なことがあれば同じ顔にはなりません。この記事は両方を順に扱います。

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この記事の姿勢について

主データの著者は、論文の末尾で 「つくり笑顔でもいいのか? という素朴な質問を受ける。答えはイエスである」と書いています。さらに 「対人印象において無表情はゼロの状態ではなく、マイナスの状態だ」とし、「普段から意識して、少し口角を上げてみる。それだけで顔の印象は見違えるように良くなる」と述べています。本記事も同じ立場です。いまの笑顔を否定するための記事ではなく、動きを一つ足すための記事として読んでください。

「感じが良い」の 35.3% は笑顔

そもそもなぜ表情なのか。第一印象について調べた 2004 年の調査では、「感じが良い人」の特徴として挙げられたものの内訳が示されています。

「感じが良い人」という第一印象の理由(2004 年の調査)
  • 笑顔: 35.3%(最多)
  • 挨拶をする: 24.3%
  • 丁寧に接する: 5.1%
先生
先生

注目していただきたいのは 「丁寧に接する」が 5.1% にとどまっているところです。丁寧さが要らないという意味ではありません。丁寧さは前提であって、印象を分けているのは表情と挨拶のほうだと読めます。

笑顔と挨拶を合わせると およそ 6 割です。当サイトが繰り返し笑顔と挨拶を扱ってきたのは、この配分があるからです。朝礼で型をそろえる手順は 「朝礼5分の笑顔トレーニングで満足度48%→81% ── 鏡・声・うなずきの3ステップ標準化」 にまとめています。本記事は、その型のなかの「顔の動き」だけを取り出して細かく見ていきます。

強さで伝わり方が変わる ── 25% の力では届かない

主データとなる 2005 年の査読論文は、笑顔の強さを数値で固定するという工夫をしています。

実験の作り(2005 年・感性工学の査読論文)
  • 被験者: 表情を作る訓練を受けていない 20 代の男性 4 名
  • 強さの決め方: 頬を引き上げる筋肉(大頬骨筋)の力いっぱいを 100% として、25%・50%・75%・100% の 4 段階
  • やり方: 筋電図の値を画面に出して見せ、その強さを保てるように練習させてから撮影
  • 測った筋肉: 目の周り・上唇を上げる筋・口角を横に引く筋・口の周り・下唇を下げる筋
  • 判定: 男女 28 名に写真 32 枚を見せ、「笑顔と認識できる」と答えた人の割合を算出
店長
店長

笑顔の「強さ」を数字で決めてから撮る、という発想がなかったです。それで、結果はどうだったんですか。

強さと「笑顔だと伝わる割合」
  • 25%(弱い): 40% を下回った(1 名の歯を見せた笑顔が 60% だったのを除く)
  • 75%: 全員の両方の形で 70% を超えた。一部は 100%
  • 100%(力いっぱい): 歯を見せた笑顔で 3 名が 100%、1 名が 82%。口を閉じた微笑では 100%・96%・96%・71%
  • 形の違い: 歯を見せた笑顔のほうが、口を閉じた微笑より伝わりやすい傾向
先生
先生

著者はここで、こう書いています。「80% の認識率を得たと仮定しても、100 名中 20 名には笑顔(好意)と取られない可能性がある」。8 割でも 5 人に 1 人には届いていないという見方です。だから強さを上げきることに意味があります。

店舗に置き換えると、「一応笑っている」状態は、半分以上の客に届いていない可能性があるということになります。練習の回数を増やすより、1 回ごとに上げきるほうが効きます。

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この数字の規模について

被験者は 20 代の男性 4 名、判定した人は 28 名です。著者自身が「年代の違いによる笑顔形成の違いや、女性被験者との比較も必要」と限界を書いています。大規模な調査ではないため、割合そのものを自店の目標値にはせず、「弱いと届かない/強くすると届く」という向きを受け取ってください。

目もとは目の筋肉で作らない ── 頬の持ち上がりが作る

ここが本記事で最もお伝えしたい点です。「目が笑っている」状態は、目の周りの筋肉を縮めて作られているのではありません。

先生
先生

同じ 2005 年の研究で、目もとまで届いた笑顔を計測したところ、目の周りの筋肉の収縮は小さいままでした。それなのに写真からは目の変化がはっきり読み取れます。著者はこれを、頬の筋肉が縮むことで目の下が圧縮されて変形したためと説明しています。

目もとが作られる順序
  • ① 頬を引き上げる筋肉が縮む(力いっぱい近くまで働く)
  • ② 頬が持ち上がる
  • ③ 目の下が押し上げられて圧縮される
  • ④ 目が細くなり、三日月の形になる ← ここで目の筋肉はほとんど使われていない
  • 2014 年の解説でも、目の周りの筋肉は最大の力の 15% を下回っていたと報告されている

著者は「これまでは笑顔の大きな特徴として眼の変形が考えられ、目の周りの筋肉の収縮からその関与が重要視されてきた」と、それまでの見方との違いをはっきり書いています。つまり通説のほうが更新された、ということです。

店長
店長

「目元のトレーニング」を朝礼のメニューに入れていました。あれは順序が逆だったということですか。

先生
先生

やめる必要はありませんが、先にやるべきは頬を持ち上げる練習です。目を細めようと意識すると、まぶたに力が入って別の形になります。頬が上がれば、目もとは後からついてくる。この順序だけ変えてみてください。

笑顔の形そのものについては 「接客の笑顔の作り方3要素 ── 歯の見せ方・頭の傾きで再来店意向39%→93%」 で扱っています。本記事はその形を作る「筋肉の側」から見た内容です。

抜けやすい動き ── 下唇を下げて三角を作る

もう一つ、練習から抜け落ちやすい動きがあります。下唇を下げる動きです。

下唇を下げる動きが果たしている役割
  • 目もとまで届いた笑顔では、下唇を下げる筋肉が最大の力の 60% 前後まで働いていた
  • この動きが口の形の三角形を作る。歯を見せた笑顔の形はここで決まる
  • 弱い笑顔でも伝わっていた被験者は、低い強さの段階から下唇を下げる筋肉を積極的に使っていた
  • 2014 年の解説では、口の魅力を分けているのは面積の大小ではなく下唇の傾きだった(魅力度の高い群 -0.50 対 低い群 -0.23、5% 水準で有意)
先生
先生

「口を大きく開ける」ではなく 「下唇を下に引く」です。ここが違うと、同じ大きさの口でも形が変わります。大きさではなく形が見られている、というのがこの研究の結論です。

朝礼で伝えるときは、「あごを下げる」ではなく「下唇だけを下げる」と言い分けてください。あごごと下げると口が縦に開いてしまい、三角の形になりません。

やりすぎる動き ── 上唇を強く引き上げない

逆に、やりすぎると別の表情が混じってしまう動きもあります。上唇を引き上げる動きです。

上唇を引き上げる筋肉について
  • この筋肉は 嫌悪や怒りの表情でも使われる
  • 研究では、この筋肉が強く働いていた被験者について 「上唇を引き上げる筋肉をリラックスさせるような笑顔形成の訓練が必要」と述べられている
  • 著者が示した作り方の指針では、歯を見せた笑顔のとき 上唇を引き上げる筋肉が最大の力の 50% を超えないよう注意し、口の形の三角形を保つ
  • 口を閉じた微笑では、口角を横に引く筋肉を上げきり、他の筋肉は 50% を超えないようにする
店長
店長

「もっと歯を見せて」と言い続けていたのですが、それだと上唇を引き上げる方向に行ってしまいますね…。

先生
先生

そこが分かれ道です。歯を見せるのは、上唇を上げてではなく、下唇を下げて。同じ「歯が見える」でも、使う筋肉がまるで違います。上唇を強く引き上げると、笑顔に別の表情が混じって判定に影響したという記録が残っています。

朝礼の声かけを 「もっと歯を見せて」から「下唇を下げて」に置き換えるだけで、向かう方向が変わります。言葉を 1 つ変えるだけなので、今日から試せます。

3 つの基準を満たせたのは 100 名中 1 名

ここまでの動きが、実際にどれくらいできているのか。2014 年の解説に、大学生 100 名を対象にした調査が載っています。

「できるだけ強い笑顔」を作らせた結果(大学生 100 名)
  • 目と口の位置の比が基準を満たした人: 18 名
  • 目の細さが基準を満たした人: 2 名
  • 口の形が基準を満たした人: 43 名
  • 3 つすべてを満たした人: わずか 1 名
先生
先生

内訳を見ると意味がはっきりします。口の形は 43 名が満たしているのに、目の細さは 2 名だけ。著者はこう結論しています。「顔の下部、口周りの筋肉を動かすことは容易であるが、頬を挙げ、目もとを緩めることは難しい」。

これはできていないという話ではなく、伸びしろの話です。口もとは多くの人が動かせている。足りないのは頬。だから朝礼の 3 分は、頬を持ち上げる動きに最も時間を使うのが理にかなっています。

笑顔の練習が続かない理由と対策は 「朝礼の笑顔トレ実行率47%→97% ── 4つの落とし穴と30日継続の12項目」 にまとめています。動きが分かっても、続かなければ変わりません。

直前の感情が顔に残る ── 89% と 53%

ここからは「いつ作るか」の話です。2021 年の研究が、店舗にとって重い結果を出しています。

実験の作り(2021 年・40〜60 代の女性 18 名)
  • ① 深呼吸と対話でリラックス状態を作り、真顔と、意識して作る笑顔を撮影
  • ② 不快な場面を思い出し、嫌悪の表情を数分間保つ → ふたたび真顔と笑顔を撮影
  • ③ 快い場面を思い出して微笑みを数分間保つ → ふたたび真顔と笑顔を撮影
  • 測り方: 顔の 491 点の特徴点から、幸福・怒り・悲しみ・驚き・恐れ・嫌悪の成分を算出する表情分析ツール
直前に何があったかで、同じ「笑顔を作る」が変わる
  • リラックス状態の後の笑顔: 幸福の成分 89%
  • 快い感情を保った後の笑顔: 幸福の成分 89%
  • 不快な感情を保った直後の笑顔: 幸福の成分 53%
  • 不快な感情を保った直後の真顔: 怒りの成分が 10% 検出された
  • 同じ直後の笑顔には、恐れの成分も確認された
店長
店長

クレーム対応の直後に、そのまま次のお客様のところへ行っています。あれは…そのまま顔に出ていたということですね。

先生
先生

本人は意識して笑顔を作っているんです。それでも 53% です。しかも真顔にも 10% 残る。笑顔を作っていない時間帯こそ見られているので、こちらのほうが影響は大きいかもしれません。

著者の考えでは、不快な感情で眉間にシワを寄せると、その周りの筋肉の緊張が持続し、意識して真顔に戻しても緊張が残るために顔の印象が下がるとされます。逆に、快い感情で口角を左右に広げて微笑むと、頬の筋肉の緊張が持ち上がった形で残り、好印象になると考えられています。

店で決めておくこと(実験の手順をそのまま使う)
  • クレーム対応の直後は、次の客の前に一拍おく。実験でリラックスを作ったのは深呼吸と対話だった
  • 誰かと一言かわす。1 人で切り替えさせない。対話が手順に入っている
  • 朝礼を「先に整える」時間として使う。快い感情の後は真顔に戻しても頬の緊張が残る
  • 店長がこの一拍を認める。「すぐ戻れ」と言えば、53% の笑顔のまま売り場に出る

クレームが起きた直後の初動そのものは 「クレーム初動30秒テンプレで怒り収束率38%→79% ── 共感・承認・行動の3ステップ」 にまとめています。また、店内でスタッフ同士の摩擦があるときも同じことが起きます。詳しくは 「スタッフ同士の無礼で労力-48%・質-38%・離職12% ── 顧客への八つ当たり25%を止める設計」 をご覧ください。

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この数字の読み方

53% と 89% は表情分析ツールが算出した「幸福の成分」の値であり、顧客が付けた評価ではありません。また対象は 40〜60 代の女性 18 名です。「深呼吸をさせれば 53% が 89% に戻る」という効果として検証されたわけでもありません。条件の違いによる差として読み、切り替えの一拍を置く根拠として使ってください。

朝礼 3 分の笑顔体操 ── 頬・下唇・声の順

ここまでを 3 分の型にします。順序が要です。頬 → 下唇 → 声の順で、目もとは狙いません。

1 分目 ── 頬を持ち上げる
  • 口を軽く閉じたまま、頬だけを斜め上に持ち上げる。目は何もしない
  • 5 秒持ち上げて、5 秒ゆるめる。これを 6 回
  • 合図は「いちばん上まで」。中くらいで止めない。弱い強さでは伝わらない
  • 鏡で見るのは目もと。頬を上げたときに目が細くなっていれば正解。細くしようとしていないのに細くなる
2 分目 ── 下唇を下げて三角を作る
  • 頬を上げたまま、下唇だけを下に引く。あごは動かさない
  • 上の歯が見える形になれば正解。上唇を引き上げて見せない
  • 5 秒保って、5 秒ゆるめる。これを 6 回
  • 合図は「下唇を下に」。「もっと歯を見せて」とは言わない
3 分目 ── 形を保ったまま声を出す
  • 頬と下唇の形を保ったまま、「いらっしゃいませ」を 3 回
  • 声を出すと形がゆるむ人が多い。ここが売り場との差になる
  • 2 人 1 組で向かい合い、相手の頬を見る。自分の顔は見えない
  • 最後に「今日はこの顔で出ます」と全員で確認して終える
先生
先生

3 分目が一番大事です。形は作れても、声を出した瞬間にゆるむ。朝礼で笑顔だけ練習して売り場で消えるのは、声と同時に作る練習をしていないからであることが多いです。

笑顔とうなずきを組み合わせるタイミングについては 「笑顔+うなずきで親近感+38%・真正性+27% ── 259人再現実験の3タイミング」 で扱っています。形ができたら、次は出すタイミングです。

30 日の導入手順 ── そろえる・確かめる・戻す

1〜10 日目 ── そろえる
  • ① 合図の言葉を 2 つに絞る: 「頬をいちばん上まで」「下唇を下に」。それ以外は言わない
  • ② 「目を細めて」と言うのをやめる: 順序が逆になる。目もとは頬の結果として出る
  • ③ 「もっと歯を見せて」を言い換える: 上唇を上げる方向に行くと、別の表情で使う筋肉が働く
  • ④ 店長が最初にやって見せる: 3 分の型を 1 人でやりきるところを見せる
11〜20 日目 ── 確かめる
  • ⑤ 2 人 1 組で頬を見合う: 自分では分からない。見るのは口ではなく頬
  • ⑥ 声を出しながら保てるかを見る: 「いらっしゃいませ」を言った瞬間にゆるんでいないか
  • ⑦ 上げきれているかを一言で確認する: 「いまのは何割ですか」と聞く。本人の感覚を言葉にさせる
  • ⑧ 中くらいで止まる人に、上限を体感させる: 一度だけ限界まで上げてもらい、その位置を覚えてもらう
21〜30 日目 ── 戻す
  • ⑨ 切り替えの一拍を決めごとにする: クレーム対応の後は深呼吸 1 回と、誰かと一言
  • ⑩ 「すぐ戻れ」と言わない: そのまま出れば、直前の感情が顔に残る
  • ⑪ 真顔の時間帯も見る: 笑顔を作っていない時間のほうが長い。そこに残る
  • ⑫ 朝礼を「先に整える時間」として位置づけ直す: 快い感情の後は真顔に戻しても頬の緊張が残る

効果は「声を出しながら形を保てた人の数」で測ってください。笑顔の良し悪しは主観で揺れますが、この数え方なら誰が見ても同じ結果になります。週ごとに並べれば、朝礼が売り場まで届いているかが分かります。

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参考研究・論点

  • 菅原徹、山田昇、佐渡山亜兵、上條正義、細谷聡、井口竹喜(2005 年発表) ── 20 代男性 4 名を対象に、頬を引き上げる筋肉の力いっぱいを 100% として 25%・50%・75%・100% の 4 段階の笑顔を作らせ、筋電図と皮膚の変形を同時に計測。男女 28 名が写真 32 枚を評価した結果、25% の弱い強さでは笑顔と認識される割合が 40% を下回り(1 名の歯を見せた笑顔 60% を除く)、75% で全員 70% 超、100% で 71〜100% となった。目もとまで届いた笑顔でも目の周りの筋肉の収縮は小さく、頬の収縮による目の下の圧縮で変形が生じていた
  • 菅原徹(2014 年発表) ── 大学生 100 名に強い笑顔を作らせたところ、3 つの形の基準を満たしたのはそれぞれ 18 名・2 名・43 名で、すべてを満たしたのは 1 名。口の魅力を分けているのは面積ではなく下唇の傾きだった(魅力度の高い群 -0.50、低い群 -0.23、5% 水準で有意)
  • 菅原徹(2021 年発表) ── 40〜60 代の女性 18 名。不快な感情を保持した直後に意識して作った笑顔は幸福の成分が 53%、リラックス後および快い感情の後は 89%。不快な感情の直後の真顔には怒りの成分が 10% 検出された
  • 西川三惠子(2004 年発表) ── 「感じが良い人」という第一印象の特徴として、笑顔が 35.3% で最も多く、挨拶をするが 24.3%、丁寧に接するが 5.1% だった

まとめ

この記事のポイント
  • 笑顔は強さで伝わり方が変わる。弱い強さでは笑顔だと認識される割合が 40% を下回り、力いっぱいで 71〜100%
  • 著者は「80% でも 100 名中 20 名には笑顔と取られない可能性がある」と述べている。上げきることに意味がある
  • 目もとは目の筋肉で作らない。頬が持ち上がって目の下が圧縮され、結果として目が細くなる(目の周りの筋肉は最大の力の 15% 未満)
  • だから練習の順序は 頬 → 下唇 → 声。「目を細めて」は順序が逆
  • 下唇を下げる動きが抜けやすい。この動きが口の形の三角を作る。口は大きさではなく形が見られている
  • 上唇を強く引き上げすぎない。嫌悪や怒りの表情でも使う筋肉のため、別の表情が混じる
  • 「もっと歯を見せて」ではなく 「下唇を下げて」。合図の言葉を変えるだけで方向が変わる
  • 大学生 100 名のうち3 つの基準をすべて満たしたのは 1 名。口もとは動かせても頬まで上げられている人は少ない
  • 嫌なことの直後は、意識して作った笑顔でも 53%(リラックス後・快い気分の後は 89%)。真顔にも怒りが 10% 残る
  • だからクレーム対応の後は深呼吸 1 回と、誰かと一言。「すぐ戻れ」と言わない
  • 効果は「声を出しながら形を保てた人の数」で測る

今週できることは 1 つだけです。朝礼の合図を「頬をいちばん上まで」に変えること。目もとには触れず、頬だけを指示してください。目が細くなるかどうかは、頬が上がった結果として確かめられます。主データの著者が書いているとおり、普段から少し口角を上げてみる。それだけで顔の印象は見違えるように良くなります。

※ 主データの被験者は 20 代の男性 4 名、笑顔を判定した人は 28 名です。著者自身が「年代の違いによる笑顔形成の違いや、女性被験者との比較も必要」と限界を述べています。「40% を下回った」は 1 名の歯を見せた笑顔(60%)を除いた条件つきの数字であり、力いっぱいの強さでも被験者により 71〜100% と幅がありました。割合そのものを自店の目標値にせず、「弱いと届かない/強くすると届く」という向きとして受け取ってください。2021 年の 53% と 89% は表情分析ツールが算出した幸福の成分の値であり、顧客の評価そのものではありません。また「深呼吸をさせれば 53% が 89% に戻る」という効果として検証されたものでもありません。第一印象の 35.3% という数字は、原典が入手できなかったため 2014 年の解説に引用された値を用いています。筋肉の働きを表す割合は研究室での計測値であり、店舗で測ることを求めるものではありません。自店では「声を出しながら形を保てた人の数」を記録しながら確かめてください。

よくある質問

笑顔体操は、何分やればいいですか?

朝礼のなかで 3 分あれば足ります。長さより順序が重要です。筋電図で笑顔の強さを 4 段階に分けて計測した関連研究(2005 年)では、25% という弱い強さの笑顔は、1 名の歯を見せた笑顔を除いて、笑顔だと認識される割合が 40% を下回りました。75% まで上げると全員が 70% を超え、力いっぱいでは 71〜100% になっています。

つまり回数を増やすことより、1 回ごとに強さを上げきることが効きます。3 分の内訳は、頬を持ち上げる動きに 1 分、下唇を下げて口の形を作る動きに 1 分、その形を保ったまま声を出す練習に 1 分が目安です。

目元のトレーニングは必要ですか?

目を細めようとする練習は必要ありません。同じ関連研究(2005 年)では、目もとまで届いた笑顔でも目の周りの筋肉の収縮は小さく、それでも写真から目の変化を読み取れました。著者はこれを、頬の筋肉が縮むことで目の下が圧縮されて変形したためと説明しています。別の解説(2014 年)でも、目の周りの筋肉は最大の力に対して 15% を下回っていました。

つまり目もとは、目の筋肉ではなく頬の持ち上がりで作られます。順序としては、頬を持ち上げる動きを先に練習してください。目を細めようと意識すると、かえって力みが出て不自然な形になります。

うちのスタッフは笑顔ができているほうだと思うのですが、練習は要りますか?

要ります。大学生 100 名に「できるだけ強い笑顔」を作らせて撮影した調査(2014 年)では、笑顔の形に関する 3 つの基準のうち、1 つ目を満たした人が 18 名、2 つ目が 2 名、3 つ目が 43 名で、3 つすべてを満たしたのはわずか 1 名でした。

著者は「顔の下部、口周りの筋肉を動かすことは容易であるが、頬を挙げ、目もとを緩めることは難しい」と結論しています。口もとは動かせても、頬まで上げられている人は少ないということです。できていないのではなく、伸びしろが大きいと考えてください。

クレーム対応の直後は、うまく笑顔が作れない気がします

気のせいではありません。40〜60 代の女性 18 名を対象にした関連研究(2021 年)では、不快な場面を思い出して嫌悪の表情を数分間保った直後に意識して作った笑顔は、表情分析ツールが測った幸福の成分が 53%でした。リラックス状態の後や、快い感情を保った後は 89% です。さらに、そのときの真顔には怒りの成分が 10% 検出されています。つまり笑顔を作っていない時間帯にも残ります。

この実験でリラックス状態は深呼吸と対話で作られていました。クレーム対応の後は、次の客を迎える前に深呼吸を 1 回入れる、誰かと一言かわす、といった手順を店の決めごとにしてください。

上の歯を見せたほうがいいのでしょうか?

見せたほうが伝わりやすい傾向があります。関連研究(2005 年)で 28 名が写真を評価した結果、口を閉じた微笑より、歯を見せた笑顔のほうが笑顔として認識されやすいという結果が出ています。ただし歯を見せることが目的ではありません。

同じ研究は、歯を見せた笑顔を作るときに上唇を引き上げる筋肉が最大の力の 50% を超えないよう注意し、口の形の三角形を保つよう述べています。上唇を強く引き上げる動きは、嫌悪や怒りの表情でも使われる筋肉によるものだからです。上唇を引き上げるのではなく、下唇を下げて三角形を作るのが順序です。

📚 この記事の参考研究・一次資料
  • 菅原徹、山田昇、佐渡山亜兵、上條正義、細谷聡、井口竹喜(2005 年発表)「笑顔のメカニズムの解明 ── 表情筋活動と表層変化の計測」 — 表情を作る訓練を受けていない 20 代男性 4 名を対象に、頬を引き上げる筋肉の最大の力を 100% として 25%・50%・75%・100% の 4 段階の笑顔を作らせ、筋電図と皮膚表面の変形を同時に計測。男女 28 名が写真 32 枚を評価したところ、25% の弱い強さでは笑顔と認識される割合が 40% を下回り(1 名の歯を見せた笑顔 60% を除く)、75% で全員 70% 超、100% で 71〜100% となった。目もとまで届いた笑顔でも目の周りの筋肉の収縮は小さく、頬の収縮にともなう目の下の圧縮によって変形が生じていた。作り方の指針として、口角を横に引く筋肉と下唇を下げる筋肉を上げきり、上唇を引き上げる筋肉は最大の力の 50% を超えないことが示されている。日本感性工学会の査読論文集
  • 菅原徹(2014 年発表)「笑顔の形状と表情筋活動の分析」 — 笑顔の形と表情筋の働きを、幾何学的な計測と筋電図の両面から整理した解説。大学生 100 名に強い笑顔を作らせたところ、3 つの形の基準を満たした人はそれぞれ 18 名・2 名・43 名で、すべてを満たしたのは 1 名だった。口の魅力を分けているのは面積の大小ではなく下唇の傾きで、魅力度の高い群 -0.50、低い群 -0.23(5% 水準で有意)。著者は末尾で「つくり笑顔でもいいのか。答えはイエスである」「対人印象において無表情はゼロの状態ではなく、マイナスの状態だ」と述べている。可視化情報学会誌
  • 菅原徹(2021 年発表)「顔の特徴情報を用いた表情と魅力の分析」 — 40〜60 代の女性 18 名を対象に、直前に保持した感情がその後の表情に与える影響を、顔の 491 点の特徴点から感情の成分を算出する表情分析ツールで計測。不快な感情を保持した直後に意識して作った笑顔は幸福の成分が 53% で、リラックス状態の後および快い感情を保持した後の 89% を下回った。不快な感情の直後の真顔には怒りの成分が 10% 検出された。可視化情報学会誌
  • 西川三惠子(2004 年発表)「第一印象に関する意識についての調査・研究」名古屋経営短期大学紀要 第 45 号 53-58 ページ — 「感じが良い人」という第一印象の特徴として、笑顔が 35.3% で最も多く、次いで挨拶をするが 24.3%、丁寧に接するが 5.1% だった。なお本記事の数値は、原典が入手できなかったため上記の菅原(2014)本文に引用された値を用いている

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