遅番→早番を半減で眠気30.6%→19.3%・不眠36.8%→29.4% ── 11時間空けるシフト設計
休憩の取り方も声かけも変えたのにスタッフの疲れが抜けない ── その原因がシフト表そのものにあることがあります。閉店作業が 23 時 30 分に終わる店で翌朝 7 時に出勤すると、間隔は 7 時間 30 分しかありません。
この状態のとき、看護師 67 名の日誌を分析した関連研究(2017 年)では睡眠時間が 5.6 時間まで短くなり、活動量計を使った関連研究(2024 年・90 名を抽出)では同じ人の中で比べても睡眠が 1 時間短くなっていました。しかも夜勤の連続よりも不利が多いという結果です。
この「遅番の翌日が早番」を 半分に減らすだけで、66 の病棟・1,314 名を 6 か月追跡した関連研究(2024 年)では、日中の強い眠気に該当する人が 30.6% → 19.3%、不眠に該当する人が 36.8% → 29.4%まで下がりました。対照群はそれぞれ約 32% のまま、34.5% → 34.1% で変化していません。
病欠も抑えられます。同じ試験の関連研究(2025 年・811 名)では、病欠日数の増え方が対照群の 0.56 倍、病欠の回数は 0.73 倍にとどまりました。全廃ではなく半減で出た数字です。
休憩の中身や声かけを工夫しても届かない疲れがあります。日をまたいで回復できていないとき、1 日の中の打ち手では取り戻せません。本記事は、シフト表の側から回復を設計するための資料です。
この記事は以下のような方に読んでいただきたい内容です。
- 休憩や声かけを工夫してもスタッフの疲れが抜けないと感じている店長
- 遅番の翌日に早番を入れざるを得ないシフトを組んでいる店舗経営者
- 体調不良による当日欠勤が続いていて原因が分からない売り場責任者
- スタッフの定着率を上げたいが、何から手をつけるか迷っている経営者
- 勤務間インターバルという言葉は知っているが、店舗にどう関係するか分からない方
概要 ── 半分に減らすだけで眠気が 30.6% → 19.3%
休憩の取り方を見直して、声かけも増やしました。それでも「最近ずっとだるい」というスタッフが減らなくて…。当日欠勤も月に何回か出ています。もう何をすればいいのか分かりません。
1 日の中の打ち手はもう十分に打たれています。残っているのは日をまたぐ回復、つまりシフトとシフトの間隔です。66 の病棟を無作為に割り付けた関連研究(2024 年・1,314 名・6 か月)では、「勤務の間隔が短い日」を半分に減らしただけで、日中の強い眠気に該当する人が 30.6% から 19.3% まで下がりました。
この研究がとくに重要なのは、シフト表を実際に書き換えて、無作為に割り付けて比べた点です。アンケートで相関を見たのではなく、介入した群としなかった群を比較しています。対照群がほぼ横ばいだったため、季節の変わり目や自然な回復では説明できません。
- 日中の強い眠気に該当する人: 30.6% → 19.3%(対照群はおよそ 32% のまま)
- 不眠に該当する人: 36.8% → 29.4%(対照群は 34.5% → 34.1%)
- 病欠日数の増え方: 対照群の 0.56 倍にとどまった
- 病欠の回数: 対照群の 0.73 倍
- ただし仕事関連の疲労: 5 つの側面すべてで効果が見られなかった
看護師の研究が、なぜ店舗に当てはまるのか
引用する研究はいずれも医療従事者が対象です。それでも店舗に当てはまるのは、問題の構造が同じだからです。「遅い時間に終わって、翌朝早くに始まる」という組み合わせが体に効くのであって、職種が効いているわけではありません。閉店作業をして帰る飲食店・小売店のスタッフは、まさにこの組み合わせを毎週のように経験しています。
勤務間インターバルとは ── 11 時間が境目
勤務間インターバルとは、勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの時間のことです。研究の世界では 「連続する 2 つのシフトの間隔が 11 時間以下」を短い勤務間インターバルと呼び、健康への影響を調べる基準にしています。22 の研究をまとめた関連研究(2016 年)がこの定義を用いています。
同じレビューは、短い勤務間インターバルを 3 種類に分けています。どの組み合わせで起きるかによって、睡眠時間と眠気への影響が違うためです。
- ① 夕方(遅番)→ 朝(早番・日勤): 店舗でいちばん多い形。閉店作業をして帰り、翌朝の開店準備に入る
- ② 夜勤 → 夕方(遅番): 24 時間営業の店舗で起きる
- ③ 朝(日勤)→ 夜勤: 同じく 24 時間営業の店舗で起きる
- 共通点: いずれも睡眠・眠気・疲労という直近の問題に悪影響の兆候がある。ただし慢性的な健康や仕事と生活の両立への影響については、証拠は一貫していない
最後の一文は正直に押さえておくべきところです。「短い勤務間インターバルが長期的な病気につながる」とまでは言い切れません。確かなのは「翌日の睡眠と眠気に確実に効く」という点で、店舗にとってはそれで十分に問題です。眠い状態の接客は、そのまま接客の質になって表れます。
何が起きているか ── 睡眠が 5.6 時間まで縮む
間隔が短いと言っても、家に帰ってすぐ寝れば 6 時間くらいは眠れる計算です。それでも足りないものでしょうか。
計算上はそうなのですが、実際に測ると足りていません。看護師 67 名が 2 週間の日誌を記録した関連研究(2017 年)では、間隔が 11 時間未満のときの睡眠時間は 5.6 時間でした。移動・入浴・食事の時間があり、しかも興奮したまま帰宅するので寝つきも遅くなるんです。
より新しい関連研究(2024 年)は、活動量計という機器を使って客観的に測定しています。看護師・准看護師 225 名が 7 日間装着し、そのうち短い勤務間インターバルと通常の日勤→日勤の両方を経験した 90 名を抽出して、同じ人の中で比べました。個人差の言い訳が効かない設計です。
- 睡眠時間: 1 時間短い
- 主観的な睡眠の質: 下がる
- 就寝時の不安: 増える(「明日早いから寝なければ」というあの感覚)
- 勤務中の眠気: 増える
- 睡眠の断片化とストレス評価: 差がなかった(本人は自覚しにくい)
最後の項目が実務にとって重要です。ストレスの自己評価には差が出ませんでした。つまりスタッフに「つらいか」と聞いても問題は見つからないということです。だからこそシフト表の側で防ぐ必要があります。
夜勤の連続のほうがきついイメージがありました。遅番から早番のほうが問題なんですか?
そこが直感に反するところです。関連研究(2017 年)は、夜勤の連続・遅番の連続・日勤の連続のそれぞれと比べましたが、どのシフトの移り変わりも、短い勤務間インターバルほど多くの不利を伴いませんでした。同じシフトが続くと体は慣れますが、間隔が詰まる切り替えには慣れようがないんです。
1 日の中でどう回復するかは 「マイクロブレイクで痛み改善率42%→78% ── 立ち仕事の1〜5分と疲れが戻らない30〜45分」 と 「接客スタッフの休憩ルーティン3種で疲労感-28% ── 5分・15分・30分の回復設計」 にまとめています。ただし睡眠が 5.6 時間しか取れていない日に、休憩の工夫で取り返すことはできません。
シフト表を実際に変えた無作為化試験 ── 66 病棟・1,314 名
ここまでは「短い勤務間インターバルのときに何が起きるか」の話でした。次の問いは 「では減らしたら良くなるのか」です。これに答えたのが関連研究(2024 年)です。
- 対象: 66 の病棟を無作為に割り付け(介入 31・対照 35)
- 参加者: 1,314 名
- 期間: 6 か月
- 介入の中身: 短い勤務間インターバルの回数を、半年あたり 13.2 回 → 6.7 回(およそ半減)に減らした。対照群はおよそ 12.0 回のまま
ここでいちばん実務的に重要なのは、ゼロにしていないことです。半年で 13.2 回あったものを 6.7 回にした。月に 2 回強あったものを月 1 回強にしたという水準です。この程度の変更で、不眠と眠気の該当者が目に見えて減りました。
結果は冒頭で示したとおり、日中の強い眠気に該当する人が 30.6% → 19.3%、不眠に該当する人が 36.8% → 29.4%。対照群がほぼ横ばい(およそ 32% のまま/34.5% → 34.1%)だったことで、シフト表の変更による効果だと言えます。
「半減」を店舗の数字に置き換える
半年で 13.2 回は、月におよそ 2.2 回。これを月 1.1 回に減らしたことになります。1 人あたり月 2 回程度の「遅番の翌日が早番」が、月 1 回になった ── その程度の変更です。人員に余裕がない店舗でも、まず自店で月に何回発生しているかを数え、その半分を当面の目標にするという現実的な進め方ができます。
病欠が抑えられる ── 増え方が対照群の 0.56 倍
眠気や不眠が減るのは分かりました。でも経営として判断するには、もう一段はっきりした数字がほしいです。
その数字も出ています。同じ試験の病欠を調べた関連研究(2025 年・811 名)では、短い休息期間の回数を半年で 18.0 回 → 9.1 回に半減させた結果、病欠日数の増え方が対照群の 0.56 倍、病欠の回数が 0.73 倍にとどまりました。
「増え方が抑えられた」という言い方をしているのは、両群とも病欠は増えていたからです。介入群も対照群も期間中に病欠は増えましたが、その増え方が介入群では明らかに小さかったということです。この研究では経済効果も試算されており、介入群 344 名・5 か月で相当額の節約になったと報告されています。
- 当日欠勤の連鎖が減る: 1 人休むと他のスタッフに負荷が寄り、次の欠勤を呼ぶ。その入口が細くなる
- 代替要員の手配コストが減る: 急な穴埋めの電話・残業代・店長自身の出勤が減る
- シフト表を書き換えるだけ: 設備投資も研修も不要で、人員を増やさずに始められる
- ただし効果は緩やか: 6 か月かけて測られた差であり、翌月に劇的に変わるものではない
当日欠勤が続く状態は、そのまま離職につながります。新人が辞める入口を塞ぐ 3 要素は 「新人定着3要素で離職率30%→15% ── 期待ギャップ・孤立感・成長実感の対処」、組織としてスタッフを守る 4 つの介入は 「接客スタッフが辞めない4つの介入 ── 離職率30%→15%(研修・裁量・支援・組織)」 にまとめています。
効かなかったこと・現場が嫌がること
ここは他ではあまり書かれない部分ですが、導入する前に必ず知っておいてください。効かなかったことと、現場が嫌がったことがあります。同じ試験の中で、はっきり報告されています。
- 関連研究(2024 年)では、仕事関連の疲労に 5 つの側面すべてで効果が見られませんでした
- 不眠と眠気は改善したのに、疲労は動かなかった。「よく眠れるようになる」ことと「疲れが取れる」ことは別だということ
- 疲労には業務量・人員配置・休憩の中身という別の打ち手が要る。シフトの間隔だけでは足りない
- 関連研究(2025 年)では、シフトを変えた群のスタッフは睡眠の問題を訴える割合こそ低かったが、以下の 3 点で不満が高かった
- シフトを「都合が悪い」と感じる割合が高い
- シフト交代の融通が利きにくい
- 引き継ぎの質が下がったと感じる
体は楽になるのに、本人たちは不便に感じるということですか。それは導入しにくいですね…。
だからこそ、下がる部分を先に埋めてから導入するんです。「体調のために我慢してほしい」と言うと必ず反発が出ます。交代の申請ルールを別に用意する、引き継ぎのメモを定型化する ── 失われる自由度を別の仕組みで補ってから始めれば、反発はかなり減らせます。
感情労働そのものの負担をどう扱うかは 「接客で常に笑顔は疲れる ── 離職率を40%→25%にする「笑顔ルール」の見直しと感情労働対策」、1 日 8 時間の中で負荷をどう配分するかは 「感情ペーシング設計で感情労働-32% ── 8時間3分割(全力3/通常3/回復2)の個人型」 にまとめました。シフトの間隔は「土台」であって、その上に休憩と感情の設計が乗ります。
店舗のシフト表での直し方 ── 閉店 23 時 30 分なら翌朝は何時から
ここからは自店のシフト表に落とします。計算はごく単純で、「実際に店を出る時刻 + 11 時間」が翌日の出勤可能時刻です。注意すべきは閉店時刻ではなく、締め作業を終えて実際に出る時刻で計算することです。
- 22 時 00 分に退勤 → 翌日 9 時 00 分以降
- 23 時 00 分に退勤 → 翌日 10 時 00 分以降
- 23 時 30 分に退勤 → 翌日 10 時 30 分以降
- 0 時 30 分に退勤 → 翌日 11 時 30 分以降
- 1 時 00 分に退勤 → 翌日 12 時 00 分以降
うちは朝 9 時開店なので、23 時 30 分退勤の翌日に早番は入れられないことになりますね。でも人が足りない日はどうしても…。
全部をなくす必要はありません。研究で効果が出たのは半減です。まず「今月は何回発生したか」を数えるところから始めてください。数えると、たいてい特定の曜日と特定の人に偏っていることが分かります。全体を変えなくても、その偏りを崩すだけで半分になることが多いんです。
- ① 同じ人に連続させない: 発生が特定の 1〜2 名に集中していないかを数える。多くの店では偏っている
- ② 曜日で固定する: 「金曜の遅番担当は土曜が遅番か休み」のように、曜日と組み合わせを型にする
- ③ 締め作業を前倒しする: レジ締め・清掃・発注の一部を閉店前に移し、実際に出る時刻を 30 分早める。これだけで基準を満たす日が出てくる
- ④ 開店準備を分ける: 早番の出勤時刻を全員そろえず、開店直前に入る役割を 1 つ作る。遅番明けの人はそちらに回す
③ と ④ は人員を増やさずにできる手です。「11 時間空ける」ではなく「実際に出る時刻を 30 分早める」と考えると、実行できる打ち手が見えてきます。
日本の制度と現状 ── 導入している企業は 5.7%
勤務間インターバルは、日本でも制度として位置づけられています。2018 年 7 月に公布された働き方改革関連法により労働時間等設定改善法が改正され、2019 年 4 月から事業主の努力義務となりました。義務ではなく努力義務であるため、罰則はありません。
- 導入している企業: 5.7%
- 導入を予定または検討している企業: 15.6%
- 予定がなく検討もしていない企業: 78.5%
この数字は裏返すと機会でもあります。78.5% の企業がまだ検討すらしていない領域です。求人票に「遅番の翌日は早番に入れません」と書ける店舗は、まだほとんどありません。採用と定着の差別化になるという見方ができます。
制度としての細かい要件や、義務化に向けた議論の動向は本記事の範囲を超えます。店舗として押さえるべきは「11 時間」という目安と、自店で何回発生しているかという実数の 2 つです。
30 日の導入手順 ── 数える・半分にする・埋め合わせる
- ① 実際の退勤時刻を記録する: シフト表の予定ではなく実際に店を出た時刻。締め作業の長さが見える
- ② 発生回数を数える: 「退勤から翌日の出勤まで 11 時間未満」が今月何回あったかを人別に数える
- ③ 偏りを見る: 特定の 1〜2 名と特定の曜日に集中していないかを確認する
- ④ 目標を決める: ゼロではなく「今の半分」。研究で効果が出たのはこの水準
- ⑤ 交代の申請ルールを作る: 融通が利きにくくなる分、交代を申請しやすい窓口を先に用意する
- ⑥ 引き継ぎを定型化する: 引き継ぎの質が下がったと感じられやすい。メモの型を 1 枚作る
- ⑦ 締め作業を 30 分前倒しする: レジ締め・清掃・発注の一部を閉店前に移す
- ⑧ 目的を説明する: 「体調のために我慢して」ではなく「当日欠勤を減らして、結果的にみんなの負担を減らすため」と伝える
- ⑨ 曜日と組み合わせを型にする: 「金曜の遅番担当は土曜が遅番か休み」のような固定ルールに落とす
- ⑩ 発生回数を再び数える: 半分になったかを確認する。数字で見えないと続かない
- ⑪ 当日欠勤の回数を並べて記録する: 効果が出るのは 6 か月単位。短期で判断しない
- ⑫ 疲労は別の打ち手で追う: シフトの間隔では疲労は動かない。休憩と業務量を別枠で見る
参考研究・論点
- インゲビョルグ・ジュペダル ほか(2024 年発表) ── 66 の病棟を無作為に割り付け、1,314 名を 6 か月追跡した比較試験。短い勤務間インターバルを半年 13.2 回 → 6.7 回に半減させると、不眠に該当する人が 36.8% → 29.4%、日中の強い眠気に該当する人が 30.6% → 19.3% に低下。対照群はほぼ横ばい。仕事関連の疲労には 5 つの側面すべてで効果なし
- インゲビョルグ・ジュペダル ほか(2025 年発表) ── 同じ試験の病欠に関する結果。811 名・66 病棟。半年 18.0 回 → 9.1 回への半減で、病欠日数の増え方が対照群の 0.56 倍、病欠の回数が 0.73 倍にとどまった。一方で介入群はシフトを都合が悪いと感じ、交代の融通が利きにくく、引き継ぎの質が下がったと感じた
- オイスタイン・ヴェーダー、アネッテ・ハリス、ビョルン・ビョルヴァトン、シリ・ヴォーゲ、ボルゲ・シーヴェルツェン、フィリップ・タッカー、ストーレ・パレセン(2016 年発表) ── 22 研究の系統的レビュー。連続する 2 つのシフトの間隔が 11.0 時間以下を短い勤務間インターバルと定義。3 種類(夕方→朝・夜→夕方・朝→夜)で影響が異なる
まとめ
- 勤務間インターバルとは勤務の終わりから次の勤務の始まりまでの時間。研究上の境目は 11 時間
- 間隔が 11 時間未満のとき、睡眠は 5.6 時間まで縮み、同じ人の中で比べても1 時間短くなる
- 夜勤の連続よりも「遅番→早番」のほうが不利が多い。同じシフトの連続には体が慣れるが、間隔が詰まる切り替えには慣れようがない
- 66 病棟・1,314 名の無作為化試験で、回数を半減させると 眠気 30.6% → 19.3%、不眠 36.8% → 29.4%。対照群はほぼ横ばい
- 病欠日数の増え方が対照群の 0.56 倍、病欠の回数が 0.73 倍にとどまった
- 仕事関連の疲労には効果がなかった。疲労には業務量・人員配置・休憩という別の打ち手が要る
- 現場は「都合が悪い」「交代しにくい」「引き継ぎの質が下がった」と感じる。下がる自由度を先に埋めてから導入する
- 計算は「実際に店を出る時刻 + 11 時間」。23 時 30 分退勤なら翌日 10 時 30 分以降
- 目標はゼロではなく「今の半分」。締め作業の 30 分前倒しと、開店直前に入る役割づくりで届く
- 導入している企業は 5.7%、検討もしていない企業が 78.5%。採用と定着の差別化になる
「休憩も声かけも工夫したのに疲れが抜けない」── そのとき残っているのはシフト表そのものです。今月はまず、実際の退勤時刻を記録して「11 時間未満」が何回あったかを数えるところから始めてみてください。数えると、たいてい特定の曜日と特定の人に偏っています。
※ 引用研究はいずれも医療従事者(看護師など)を対象としたものです。店舗に当てはめられるのは、「遅い時間に終わって翌朝早くに始まる」という勤務の組み合わせが同じだからで、職種が同じだからではありません。効果は 6 か月かけて測られたもので、翌月に大きく変わるものではありません。また、日本の勤務間インターバル制度は努力義務であり、導入の要件や運用は事業所の状況によって異なります。就業規則の変更を伴う場合は、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
勤務間インターバルとは何ですか。何時間空ければいいのですか?
勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの時間のことです。研究の世界では 「連続する 2 つのシフトの間隔が 11 時間以下」を短い勤務間インターバルと呼び、健康への影響を調べる基準にしています。22 の研究をまとめた関連研究(2016 年)がこの定義を用いており、日本でも労働時間等設定改善法にもとづく制度で 9〜11 時間が目安とされています。
店舗に当てはめると、閉店作業が 23 時 30 分に終わる店で翌朝 7 時に出勤すると間隔は 7 時間 30 分しかなく、基準を大きく下回ります。11 時間を確保するなら、翌日の出勤は 10 時 30 分以降になります。
遅番の翌日が早番だと、実際どれくらい睡眠が減るのですか?
看護師 67 名が 2 週間の勤務・睡眠日誌を記録した関連研究(2017 年)では、間隔が 11 時間未満のときの睡眠時間は 5.6 時間まで短くなりました。寝つきがやや遅くなり、主要な睡眠が急に断ち切られる形になります。
さらに活動量計を使った関連研究(2024 年・225 名から 90 名を抽出)では、同じ人の中で比べても短い勤務間インターバルのときは睡眠が 1 時間短く、主観的な睡眠の質が下がり、就寝時の不安が増え、勤務中の眠気が増えていました。注目すべきは、夜勤の連続や遅番の連続よりも、この「遅番→早番」のほうが不利が多かったことです。
シフトを変えると本当に体調は良くなるのですか?
無作為化して確かめた試験があります。66 の病棟を無作為に割り付け、1,314 名を 6 か月追跡した関連研究(2024 年)では、短い勤務間インターバルの回数を半年あたり 13.2 回から 6.7 回へ、およそ半分に減らしました。その結果、不眠に該当する人の割合が 36.8% から 29.4% へ、日中の強い眠気に該当する人の割合が 30.6% から 19.3% へ下がりました。
対照群はそれぞれ 34.5% → 34.1%、およそ 32% のままで変化していません。つまり季節の変わり目や自然な回復では説明できない、シフト表を変えたことによる変化だと言えます。
全部なくすのは無理です。減らすだけでも意味はありますか?
あります。むしろ研究で効果が確認されたのは「全廃」ではなく 「半減」です。関連研究(2024 年)の介入群は、短い勤務間インターバルをゼロにしたわけではなく、半年あたり 13.2 回から 6.7 回に減らしただけでした。病欠を調べた関連研究(2025 年)でも、18.0 回から 9.1 回への半減で、病欠日数の増え方が対照群の 0.56 倍にとどまっています。
人員に余裕がない店舗でも、まずは月に何回発生しているかを数え、その半分にすることを当面の目標にしてください。ゼロを目指して挫折するより、半分にして続けるほうが結果が出ます。
導入するとスタッフから不満は出ませんか?
出ます。ここは正直に押さえておくべき点です。病欠を調べた関連研究(2025 年)では、シフトを変えた群のスタッフは、睡眠の問題を訴える割合こそ低かったものの、シフトを「都合が悪い」と感じる割合が高く、シフト交代の融通が利きにくいと感じ、引き継ぎの質が下がったと感じていました。体は楽になっても、働き方の自由度は下がるということです。
導入するときは「体調のために我慢してほしい」ではなく、交代の申請ルールを別に用意する、引き継ぎのメモを定型化するなど、下がる部分を先に埋める設計が要ります。
- インゲビョルグ・ジュペダル、アネッテ・ハリス、エルリング・スヴェンセン、ストーレ・パレセン、シリ・ヴォーゲ、モルテン・ニールセン、エルレンド・スンデ、ビョルン・ビョルヴァトン、オイスタイン・ホルメリード、オイスタイン・ヴェーダー(2024 年発表)「短い勤務間インターバルを減らした勤務表が、不眠・眠気・仕事関連の疲労に与える効果 ── 大規模クラスター無作為化比較試験」 — 66 病棟(介入 31・対照 35)・1,314 名・6 か月。半年あたり 13.2 回 → 6.7 回への半減で、不眠に該当する人が 36.8% → 29.4%、日中の強い眠気に該当する人が 30.6% → 19.3% に低下。対照群はほぼ横ばい。仕事関連の疲労には効果なし。睡眠研究の国際学術誌
- インゲビョルグ・ジュペダル ほか(2025 年発表)「短い休息期間の少ない勤務表と医療従事者の病欠 ── クラスター無作為化比較試験」 — 811 名・66 病棟。半年 18.0 回 → 9.1 回への半減で、病欠日数の増え方が対照群の 0.56 倍、病欠の回数が 0.73 倍にとどまった。経済効果も試算。一方で介入群はシフトを都合が悪いと感じ、交代の融通が利きにくく、引き継ぎの質が下がったと感じた。医学の国際学術誌(オープンアクセス)
- オイスタイン・ヴェーダー、アネッテ・ハリス、ビョルン・ビョルヴァトン、シリ・ヴォーゲ、ボルゲ・シーヴェルツェン、フィリップ・タッカー、ストーレ・パレセン(2016 年発表)「交代勤務における短い勤務間インターバルと健康に関する成果の関係の系統的レビュー」 — 21 論文に掲載された 22 研究。連続する 2 つのシフトの間隔が 11.0 時間以下を短い勤務間インターバルと定義。3 種類(夕方→朝・夜→夕方・朝→夜)で睡眠時間と眠気への影響が異なる。人間工学の国際学術誌
- オイスタイン・ヴェーダー、エルレンド・モーランド、マリー・ラーセン、アネッテ・ハリス、エイリン・エレヴィク、ボルゲ・シーヴェルツェン、ビョルン・ビョルヴァトン、シリ・ヴォーゲ、ストーレ・パレセン(2017 年発表)「交代勤務における短い勤務間インターバルに伴う睡眠の不利 ── 日誌研究」 — 看護師 67 名が 2 週間の勤務・睡眠日誌を記録。間隔が 11 時間未満のとき睡眠時間は 5.6 時間。夜勤の連続・遅番の連続・日勤の連続のいずれよりも不利が多かった。産業環境医学の国際学術誌
- クリスティン・エステル、フィリップ・タッカー、マリー・セーデルストレム、アンナ・ダールグレン(2024 年発表)「短い勤務間インターバルと睡眠・眠気・ストレス ── 客観的な睡眠データと日誌による個人内の実地研究」 — 看護師・准看護師 225 名が活動量計を装着し 7 日間記録、両条件を経験した 90 名を抽出。同じ人の中で比べて睡眠時間が 1 時間短く、主観的な睡眠の質が下がり、就寝時の不安と勤務中の眠気が増えた。労働環境と健康の国際学術誌
- 厚生労働省「令和 6 年就労条件総合調査」 — 勤務間インターバル制度を導入している企業は 5.7%、導入予定または検討中が 15.6%、予定がなく検討もしていない企業が 78.5%。制度は 2018 年 7 月公布の働き方改革関連法により労働時間等設定改善法が改正され、2019 年 4 月から努力義務
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